すぐ外でベルが鳴り、いつものように生徒たちが、医務室の上や下の廊下に溢あふれ出すドヤドヤという騒音が遠くに聞こえた。ハリーはマダム・ポンフリーを見つめたまま、じっと動かなかった。恐きょう怖ふが湧わき上がってきた。
話せる人はもう誰も残っていない。ダンブルドアは行ってしまった。ハグリッドも行ってしまった。それでも、マクゴナガル先生にはいつでも頼れると思っていた。短気で融通ゆうずうが利きかないところはあるかもしれないが、いつでも信頼しんらいできる確実な存在だった……。
「驚おどろくのも無理はありません、ポッター」マダム・ポンフリーが怒りを込めて、まったくそのとおりという顔をした。「昼ひる日ひ中なかに一対一で対決たいけつしたら、あんな連中なんぞにミネルバ・マクゴナガルが『失神しっしん』させられるものですか 卑ひ怯きょう者もの、そうです……見下げ果てた卑劣ひれつな行為こういです……わたしがいなければ生徒はどうなるかと心配でなかったら、わたしだって抗議こうぎの辞任じにんをするところです」
「ええ」ハリーは何も理解せずに合槌あいづちを打った。
頭が真っ白のまま、医い務む室しつから混み合った廊下ろうかに出たハリーは、人混みに揉もまれながら立ち尽くした。言いようのない恐きょう怖ふが、毒ガスのように湧わき上がり、頭がぐらぐらして、どうしていいやら途方とほうに暮れた……。
ロンとハーマイオニー。頭の中で声がした。
ハリーはまた走り出した。生徒たちを押し退のけ、みんなが怒る声にも気づかなかった。全速力で二つの階を下り、大だい理り石せきの階段の上に着いたとき、二人が急いでハリーのほうにやって来るのが見えた。
「ハリー」ハーマイオニーが、引きつった表情ですぐさま呼びかけた。「何があったの 大だい丈じょう夫ぶ 気分が悪いの」
「どこに行ってたんだよ」ロンが問い詰つめるように聞いた。
「一いっ緒しょに来て」ハリーは急せき込こんで言った。「早く。話したいことがあるんだ」
ハリーは二人を連れて二階の廊下を歩き、あちこち部屋を覗のぞき込んで、やっと空あいている教室を見つけ、そこに飛び込んだ。ロンとハーマイオニーを入れるとすぐドアを閉め、ハリーはドアに寄より掛かかって二人と向き合った。
「シリウスがヴォルデモートに捕つかまった」
「えーっ」
「どうしてそれが――」
「見たんだ。ついさっき。試験中に居眠いねむりしたとき」
「でも――でもどこで どんなふうに」真まっ青さおな顔で、ハーマイオニーが聞いた。
「どうやってかはわからない」ハリーが言った。「でも、どこなのかははっきりわかる。神しん秘ぴ部ぶに、小さなガラスの球で埋まった棚たながたくさんある部屋があるんだ。二人は九十七列目の棚の奥にいる……あいつがシリウスを使って、何だか知らないけどそこにある自分の手に入れたいものを取らせようとしてるんだ……あいつがシリウスを拷問ごうもんしてる……最後には殺すって言ってるんだ」
“你这么吃惊,我一点也不觉得奇怪,波特。”庞弗雷夫人带着一种认同的表情说,“在白天他们谁也别想击昏米勒娃·麦格!懦夫,那是……卑鄙的懦夫……要不是担心自己走了以后你们这些学生会出事,我会用辞职来抗议的。”
“你去哪儿了?”罗恩问道。
“跟我来,”哈利飞快地说,“来,我必须告诉你们一些事情。”