「ハーマイオニー、あいつが僕をあそこに行かせるためにやったかどうかなんて、どうでもいいんだ――マクゴナガルは聖せいマンゴに連れて行かれたし、僕たちが話のできる騎き士し団だんは、もうホグワーツに一人もいない。そして、もし僕らが行かなければ、シリウスは死ぬんだ」
「でもハリー――あなたの夢が、もし――単なる夢だったら」
ハリーは焦じれったさに喚わめき声を上げた。ハーマイオニーはびくっとして、ハリーから離はなれるように後退あとずさりした。
「君にはわかってない」ハリーが怒ど鳴なりつけた。「悪夢あくむを見たんじゃない。ただの夢じゃないんだ 何のための『閉へい心しん術じゅつ』だったと思う ダンブルドアがなぜ僕にこういうことを見ないようにさせたかったと思う なぜなら全部本当のことだからなんだ、ハーマイオニー――シリウスが窮きゅう地ちに陥おちいってる。僕はシリウスを見たんだ。ヴォルデモートに捕つかまったんだ。ほかには誰も知らない。つまり、助けられるのは僕らしかいないんだ。君がやりたくないなら、いいさ。だけど、僕は行く。わかったね それに、僕の記憶きおくが正しければ、君を吸魂鬼ディメンターから救い出したとき、君は『人助ひとだすけ癖へき』が問題だなんて言わなかった。それに――」ハリーはロンを見た。「――君の妹を僕がバジリスクから助けたとき――」
「僕は問題だなんて一度も言ってないぜ」ロンが熱くなった。
「だけど、ハリー、あなた、たったいま自分で言ったわ」ハーマイオニーが激はげしい口く調ちょうで言った。「ダンブルドアは、あなたにこういうことを頭から締しめ出す訓練をしてほしかったのよ。ちゃんと『閉心術』を実行していたら、見なかったはずよ、こんな――」
「何にも見なかったかのように振舞ふるまえって言うんだったら――」
「シリウスが言ったでしょう。あなたが心を閉じることができるようになるのが、何よりも大切だって」
「いいや、シリウスも言うことが変わるさ。僕がさっき見たことを知ったら――」
教室のドアが開いた。ハリー、ロン、ハーマイオニーがさっと振り向いた。ジニーが何事だろうという顔で入ってきた。そのあとから、いつものようにたまたま迷い込んできたような顔で、ルーナが入ってきた。