「おまえが条件をつけるんじゃない」アンブリッジ先生が厳きびしく言った。
「いいわ」ハーマイオニーがまた両手に顔を埋うずめて啜り泣いた。「いいわ……みんなに見せるといいわ。みんながあなたに向かって武器を使うといいんだわ ほんとは、たくさん、たくさん人を呼んで見せてほしいわ それ――それがあなたにふさわしいわ――ああ、そうなってほしい――学校中が武器のありかを知って、その使い――使い方も。そしたら、あなたが誰かにいやがらせをしたとき、みんながあなたを、こ――攻撃こうげきできるわ」
これはアンブリッジに相当効きき目があった。アンブリッジはちらりと疑り深い目で尋じん問もん官かん親しん衛えい隊たいを見た。飛び出した目が一いっ瞬しゅんマルフォイを捕とららえた。意地汚い貪欲どんよくな表情を浮かべていたマルフォイは、とっさにそれを隠すことができなかった。
アンブリッジはそれからしばらくハーマイオニーを熟視じゅくししていたが、やがて、自分では間違いなく母親らしいと思い込んでいる声で話しかけた。
「いいでしょう、嬢ちゃん、あなたとわたくしだけにしましょう……それと、ポッターも連れて行きましょうね さあ、立って」
「先生」マルフォイが熱っぽく言った。「アンブリッジ先生、誰か親衛隊の者が一いっ緒しょに行って、お役に――」
「わたくしは歴れっきとした魔法省の役人ですよ、マルフォイ。杖つえもない十代の子供を二人ぐらい、わたくし一人では扱あつかい切れないとでも思うのですか」アンブリッジが鋭するどく言った。「いずれにしても、この武器は、学生が見るべきものではないようです。あなたたちはここにいて、わたくしが戻るまで、この連中が誰も――」アンブリッジはロン、ジニー、ネビル、ルーナをぐるりと指した。「逃げないようにしていなさい」
「わかりました」マルフォイはがっかりして拗すねた様子だった。
「さあ、二人ともわたくしの前を歩いて、案内しなさい」
アンブリッジはハーマイオニーとハリーに杖を突きつけた。
「先に行きなさい」