「それで、こいつらは」ハーマイオニーをつかんでいた、険けわしい顔の灰色のケンタウルスが言った。
「この子たちは幼おさない」ハリーの背後でゆったりとした悲しげな声が言った。「我々は仔馬こうまを襲おそわない」
「こいつらはあの女をここに連れてきたんだぞ、ロナン」ハリーをがっちりとつかんでいたケンタウルスが答えた。「しかもそれほど幼くはない……こっちの子は、もう青年になりかかっている」ケンタウルスがハリーのローブの首根くびねっこをつかんで揺ゆすった。
「お願いです」ハーマイオニーが息を詰つまらせながら言った。「お願いですから、私たちを襲わないでください。私たちはあの女の人のような考え方はしません。魔法省の役人じゃありません ここに来たのは、ただ、あの人をみなさんに追い払ってほしいと思ったからです」
ハーマイオニーをつかんでいた灰色のケンタウルスの表情から、ハリーはハーマイオニーがとんでもない間違いを言ったとすぐ気づいた。灰色のケンタウルスは首をブルッと後ろに振り、後脚あとあしで激しく地面を蹴けり、吠えるように言った。「ロナン、わかっただろう こいつらはもう、ヒト類特有とくゆうの傲慢ごうまんさを持っているのだ。つまり、人間の女の子よ、おまえたちの代わりに、我々が手を汚すというわけだな おまえたちの奴隷どれいとして行動し、忠ちゅう実じつな猟りょう犬けんのようにおまえたちの敵を追うというわけか」
「違います」ハーマイオニーは恐怖のあまり金切かなきり声ごえを上げた。「お願いです――そんなつもりじゃありません 私はただ、みなさんが――助けてくださるんじゃないかと――」
これが事態じたいをますます悪くしたようだった。
「我々はヒトを助けたりしない」ハリーをつかんでいたケンタウルスが唸うなるように言った。つかんだ手にいちだんと力が入り、同時に後脚あとあしで少し立ち上がったので、ハリーの足が一いっ瞬しゅん地面から浮き上がった。「我々は孤高ここうの種族だ。そのことを誇ほこりにしている。おまえたちがここを立ち去った後、おまえたちの企くわだてを我々が実行したなどと吹ふい聴ちょうすることを許しはしない」
「僕たち、そんなことを言うつもりはありません」ハリーが叫さけんだ。「僕たちの望むことを実行したのじゃないことはわかっています――」
しかし、誰もハリーに耳を貸かさないようだった。