ハリーもハーマイオニーも思わず寄より添そい、木立を透すかして向こうを窺うかがった。
ロンが目に入った。ジニー、ネビル、そしてルーナがそのあとから急いでついて来る。全員がかなりボロボロだった。――ジニーの頬ほおにはいく筋すじも長いひっ掻かき傷があり、ネビルの右目の上にはたん瘤こぶが紫むらさき色いろに膨ふくれ上がっていた。ロンの唇くちびるは前よりもひどく出血している――しかし、全員がかなり得意げだ。
「それで」ロンが低く垂たれた木の枝を押し退のけ、杖をハリーにさし出しながら言った。「何かいい考えはあるの」
「どうやって逃げたんだ」ハリーは杖を受け取りながら、驚おどろいて聞いた。
「失しっ神しん光こう線せんを二、三発と、武ぶ装そう解かい除じょ術じゅつ。ネビルは『妨害ぼうがいの呪のろい』のすごいやつを一発かましてくれたぜ」ロンは何でもなさそうに答えながら、ハーマイオニーにも杖を渡した。「だけど、何てったって一番はジニーだな。マルフォイをやっつけた――コウモリ鼻糞はなクソの呪のろい――最高だったね。やつの顔がものすごいビラビラでべったり覆おおわれちゃってさ。とにかく、君たちが森に向かうのが窓から見えたから跡あとを追ったのさ。アンブリッジはどうしちゃったんだ」
「連れていかれた」ハリーが答えた。「ケンタウルスの群れに」
「それで、ケンタウルスは、あなたたちを放ほうって行っちゃったの」ジニーは度肝どぎもを抜かれたように言った。
「ううん。ケンタウルスはグロウプに追われて行ったのさ」ハリーが言った。
「グロウプって誰」ルーナが興きょう味みを示した。
「ハグリッドの弟」ロンが即座そくざに言った。「とにかく、いま、それは置いといて。ハリー、暖炉だんろで何かわかったかい 『例のあの人』はシリウスを捕つかまえたのか それとも――」
「そうなんだ」ハリーが答えたそのとき、傷きず痕あとがまたちくちく痛んだ。「だけど、シリウスがまだ生きてるのは確かだ。ただ、助けに行こうにも、どうやってあそこに行けるかがわからない」
みんなが黙だまり込こんだ。問題がどうにもならないほど大きすぎて、恐ろしかった。
「まあ、全員飛んでいくほかないでしょう」ルーナが言った。ハリーがいままで聞いたルーナの声の中で、一番沈ちん着ちゃく冷れい静せいな声だった。