床に落ちたガラスの破片はへんから、真しん珠じゅ色いろのゴーストのような半はん透とう明めいな姿が二つ、煙のようにゆらゆらと立ち昇のぼり、それぞれに語り出した。しかし互いの声に掻かき消され、マルフォイとベラトリックスの怒ど鳴なり合う声の合間あいまに、言葉は切れ切れにしか聞き取れなかった。
「……太陽の至しの時、一つの新たな……」ひげの老人の姿が言った。
「攻撃こうげきするな 予言が必要なのだ」
「こいつは不敵ふてきにも――よくも――」ベラトリックスは支し離り滅めつ裂れつに叫んだ。「平気でそこに――穢れた混血め――」
「予言を手に入れるまで待て」マルフォイが怒ど鳴なった。
「……そしてそのあとには何者も来ない……」若い女性の姿が言った。
砕くだけた球から飛び出した二つの姿は、溶とけるように空くうに消えた。その姿も、かつての住処すみかも跡形あとかたもなく、ただガラスの破片が床に散らばっているだけだった。しかし、その姿が、ハリーにあることを思いつかせた。どうやって仲間なかまにそれを伝えるかが問題だ。
「まだ話してもらっていないな。僕に渡せと言うこの予言の、どこがそんなに特別なのか」ハリーは時間を稼かせいでいた。足をゆっくり横に動かし、誰かの足を探った。
「私たちに小こ細ざい工くは通じないぞ、ポッター」マルフォイが言った。
「小細工なんかしてないさ」ハリーは半分しゃべるほうに気を使い、あとの半分は足で探ることに集中していた。すると誰かの足指に触ふれた。ハリーはそれを踏ふんだ。背後で鋭するどく息を呑のむ気配がし、ハーマイオニーだな、とハリーは思った。
「何なの」ハーマイオニーが小声で聞いた。
「ダンブルドアは、おまえが額ひたいにその傷きず痕あとを持つ理由が、神しん秘ぴ部ぶの内奥ないおうに隠されていると、おまえに話していなかったのか」マルフォイがせせら笑った。
「僕が――えっ」一いっ瞬しゅん、ハリーは何をしようとしていたのかを忘れてしまった。「僕の傷痕がどうしたって」
「何なの」ハリーの背後で、ハーマイオニーがさっきより切羽せっぱ詰つまったように囁ささやいた。
「あろうことか」マルフォイが意地の悪い喜びを声に出した。死し喰くい人びとの何人かがまた笑った。その笑いに紛まぎれて、ハリーはできるだけ唇くちびるを動かさずに、ハーマイオニーにひっそりと言った。「棚たなを壊こわせ――」
“怎么了?”赫敏声音很小地问道。
“邓布利多从来没告诉过你,你留下那道伤疤的原因就藏在神秘事务司里吗?”马尔福嘲笑着说。
“我—— 什么?”哈利说,片刻问他完全忘了自己的计划,“我的伤疤怎么了?”
“怎么了?”赫敏在身后又小声问了一遍,语气比刚才还要急切。