「ダンブルドアはおまえに一度も話さなかったと」マルフォイが繰くり返した。「なるほど、ポッター、おまえがもっと早く来なかった理由が、それでわかった。闇やみの帝てい王おうはなぜなのか訝いぶかっておられた――」
「――僕が『いまだ』って言ったらだよ――」
「――その隠し場所を、闇の帝王が夢でおまえに教えたとき、なぜおまえが駆かけつけてこなかったのかと。闇の帝王は、当然おまえが好こう奇き心しんで、予言の言葉を正確に聞きたがるだろうとお考えだったが……」
「そう考えたのかい」ハリーが言った。
背後でハーマイオニーが、ハリーの言葉を他の仲間なかまに伝えているのが、耳でというより気配で感じ取れた。死喰い人の注意を逸そらすのに、ハリーは話し続けようとした。
「それじゃ、あいつは、僕がそれを取りにやって来るよう望んでいたんだな どうして」
「どうしてだと」マルフォイは信じ難がたいとばかり、喜びの声を上げた。「なぜなら、神秘部から予言を取り出すことを許されるのは、ポッター、その予言にかかわる者だけだからだ。闇の帝王は、ほかの者を使って盗ませようとしたときに、それに気づかれた」
「それなら、どうして僕に関する予言を盗もうとしたんだ」
「二人に関するものだ、ポッター。二人に関する……おまえが赤ん坊のとき、闇の帝王が何故なにゆえおまえを殺そうとしたのか、不ふ思し議ぎに思ったことはないのか」
ハリーは、マルフォイのフードの細い切れ目をじっと覗のぞき込こんだ。奥で灰色の目がギラギラ光っている。この予言のせいで僕の両親は死んだのか 僕が額に稲いな妻ずま形がたの傷を持つことになったのか すべての答えが、いま自分のこの手に握にぎられていると言うのか
「誰かがヴォルデモートと僕に関する予言をしたと言うのか」
ハリーはルシウス・マルフォイを見つめ、暖かいガラス球を握にぎる指に一層いっそう力を込めながら、静かに言った。球はスニッチとほとんど変わらない大きさで、埃ほこりでまだザラザラしていた。
「そしてあいつが僕に来させて、これを取らせたのか どうして自分自身で来て取らなかった」
「自分で取る」ベラトリックスが狂ったように高笑いしながら、甲高かんだかい声で言った。
「闇やみの帝てい王おうが魔法省に入り込む 省がおめでたくもあの方かたのご帰還きかんを無む視ししているというのに 私の親愛しんあいなる従弟いとこのために時間をむだにしているこの時に、闇やみ祓ばらいたちの前に闇の帝王が姿を見せる」
「それじゃ、あいつはおまえたちに汚きたない仕事をやらせてるわけか」ハリーが言った。「スタージスに盗ませようとしたように――それにボードも」
「なかなかだな、ポッター、なかなかだ……」マルフォイがゆっくりと言った。「しかし闇の帝王はご存知ぞんじだ。おまえが愚おろか者ではな――」
「いまだ」ハリーが叫さけんだ。