五つの声がハリーの背後で叫んだ。
「レダクト 粉々こなごな」
五つの呪じゅ文もんが五つの方向に放はなたれ、狙ねらわれた棚たなが爆発ばくはつした。聳そびえ立つような棚がぐらりと揺ゆれ、何百というガラス球が割れ、真しん珠じゅ色いろの姿が空中に立ち昇のぼり、宙に浮かんだ。砕くだけたガラスと木こっ端ぱが雨あめ霰あられと降ふってくる中、久遠くおんの昔からの予言の声が鳴り響ひびいた――。
「逃げろ」ハリーが叫んだ。
棚が危なっかしく揺れ、ガラス球がさらに頭上に落ちかけていた。ハリーはハーマイオニーのローブを片手かたてで握れるだけ握り、ぐいと手前に引っ張りながら、片方の腕で頭を覆おおった。壊こわれた棚の塊かたまりやガラスの破片はへんが、大だい音おん響きょうとともに頭上に崩くずれ落ちてきた。死し喰くい人びとが一人、もうもうたる埃の中を突っ込んできた。ハリーはその覆面ふくめんの顔に強きょう烈れつな肘打ひじうちを食らわせた。つぶれた棚が轟音ごうおんを上げ、折り重なって崩れ落ちた。喚わめき声、呻うめき声、阿あ鼻び叫きょう喚かんの中を、球から放はなたれた「予よ見けん者しゃ」の切れ切れの声が不気味に響く――。
ハリーは行く手に誰もいないことに気づいた。ロン、ジニー、ルーナが両腕で頭をかばいながら、ハリーの脇わきを疾走しっそうして行くのが見える。何か重たいものがハリーの横よこっ面つらにぶつかったが、ハリーは頭を少しかわしただけで全速力で走り通した。誰かの手がハリーの肩をつかんだ。
「ステューピファイ 麻ま痺ひせよ」
ハーマイオニーの声が聞こえた。手はすぐに離はなれた――。
みんなが九十七列目の端に出た。ハリーは右に曲がり、全力疾走した。すぐ後ろで足音が聞こえ、ハーマイオニーがネビルを励はげます声がした。まっすぐだ。来るとき通った扉とびらは半開きになっている。ガラスの釣鐘つりがねがキラキラ輝かがやくのが見える。ハリーは弾丸だんがんのように扉を通った。予言はまだしっかりと安全に握にぎり締しめている。ほかのみんなが飛ぶように扉とびらを抜けるのを待って、ハリーは扉を閉めた――。
「コロポータス 扉よくっつけ」ハーマイオニーが息も絶え絶えに唱となえると、扉は奇き妙みょうなグチャッという音とともに密閉みっぺいされた。
「みんな――みんなはどこだ」ハリーが喘あえぎながら言った。
ロン、ルーナ、ジニーが先にいると思っていた。この部屋で待っていると思っていた。しかし、ここには誰もいない。
「きっと道を間違えたんだわ」ハーマイオニーが恐きょう怖ふを浮かべて小声で言った。
「聞いて」ネビルが囁ささやいた。
いま封印ふういんしたばかりの扉の向こうから、足音や怒ど鳴なり声が響ひびいてきた。ハリーは扉に耳を近づけた。ルシウス・マルフォイの吠ほえる声が聞こえた。
「ノットは放ほうっておけ。放っておけと言っているのだ――闇やみの帝てい王おうにとっては、そんな怪け我がなど、予言を失うことに比べればどうでもいいことだ。ジャグソン、こっちに戻れ、組織を立て直す 二人、組くみになって探すのだ。いいか、忘れるな。予言を手に入れるまではポッターに手荒なまねはするな。ほかのやつらは、必要なら殺せ――ベラトリックス、ロドルファス、左へ行け。クラッブ、ラバスタン、右だ――ジャグソン、ドロホフ、正面の扉だ――マクネアとエイブリーはこっちから――ルックウッド、あっちだ――マルシベール、私と一いっ緒しょに来い」
「どうしましょう」ハーマイオニーが頭のてっぺんから爪先つまさきまで震ふるえながらハリーに聞いた。
「そうだな、とにかく、このまま突っ立って、連中に見つかるのを待つという手はない」ハリーが答えた。「扉から離はなれよう」
“快跑!”哈利高喊,架子摇摇欲坠,更多的玻璃球开始从上面掉下来。他一把抓住赫敏的长袍往前拖,另一只胳膊遮住脑袋,大块断裂的架子还有细小的玻璃碎片轰隆隆哗啦啦落在他们身上。一个食死徒穿过尘雾向前猛蹿过来,哈利用胳膊肘狠狠地顶在他戴着面罩的脸上;痛苦的叫喊声、架子倒塌下来爆裂的轰鸣声,从玻璃球里释放出来的先知们断断续续的说话声古怪地响成一片——哈利发现前面没有阻碍,还看到罗恩、金妮和卢娜从他身边飞奔而过,他们的胳膊都捂在脑袋上;有什么东西重重地从侧面打在他脸上,可他只是猛地低下脑袋一个劲儿地向前冲;他的肩膀突然被一只手抓住了,他听到赫敏大喊一声:“昏昏倒地!”那只手立刻松开了——他们来到第97排的另一端;哈利向右一转开始全速奔跑;他能够听到身后的脚步声和赫敏催促纳威的声音;就在正前方,一扇门虚掩着,他们就是从这里进来的,哈利可以看到钟形玻璃罩闪烁着的光芒;他一个箭步冲出门外,等待其他人快速穿过门槛之后再把门猛地关上,预言球仍完好无损地攥在他的手里——
“快快禁锢!”赫敏上气不接下气地念着,屋门发出吱吱嘎嘎的奇怪声音封上了。