三人はできるだけ音を立てないように走った。小さな卵たまごが孵ふ化かを繰くり返している輝かがやくガラスの釣鐘つりがねを通り過ぎ、部屋の一番向こうにある、円形のホールに出る扉を目指して走った。あと少しというときに、ハーマイオニーが呪じゅ文もんで封ふうじた扉に、何か大きな重いものが衝しょう突とつする音をハリーは聞いた。
「退どいてろ」荒々しい声がした。
「アロホモーラ」
扉がパッと開いた。ハリー、ハーマイオニー、ネビルは机の下に飛び込んだ。二人の死し喰くい人びとのローブの裾すそが、忙いそがしく足を動かして近づいてくるのが見えた。
「やつらはまっすぐホールに走り抜けたかもしれん」荒々しい声が言った。
「机の下を調べろ」もう一つの声が言った。
死喰い人たちが膝ひざを折るのが見えた。机の下から杖つえを突き出し、ハリーが叫さけんだ。
「麻ま痺ひせよ」
赤い閃光せんこうが近くにいた死し喰くい人びとに命中した。男はのけ反ぞって倒れ、床置ゆかおき時計にぶつかり、時計が倒れた。しかし二人目の死喰い人は飛び退のいてハリーの呪じゅ文もんをかわし、よく狙ねらいを定めようと机の下から這はい出そうとしていたハーマイオニーに杖つえを突きつけた。
「アバダ――」
ハリーは床を飛んで男の膝ひざのあたりに食らいついた。男は転倒てんとうし、的まとがはずれた。ネビルは助けようと夢中で机をひっくり返し、縺もつれ合っている二人に、やみくもに杖を向けて叫さけんだ。
「エクスペリアームス」
ハリーの杖も死喰い人のも、持ち主の手を離はなれて飛び、「予言よげんの間ま」の入口に戻る方角に吹っ飛んだ。二人とも急いで立ち上がり、杖を追った。死喰い人が先頭で、ハリーがすぐあとに続き、ネビルは自分のやってしまったことに唖然あぜんとしながらしんがりを走った。
「ハリー、どいて」ネビルが叫んだ。絶対にへまを取り返そうとしているらしい。
ハリーは飛び退いた。ネビルが再び狙い定めて叫んだ。
「麻ま痺ひせよ」