死喰い人が釣鐘つりがねから頭を引き抜いてしまった。奇き々き怪々かいかいなありさまだった。小さな赤ん坊の頭が大声で喚わめき、一方いっぽう、太い腕を所かまわず振り回すのは危険だった。危あやうくハリーに当たりそうになったが、ハリーはかわした。ハリーが杖つえを構かまえると、驚おどろいたことにハーマイオニーがその腕を押さえた。
「赤ちゃんを傷きずつけちゃダメ」
そんなことを議論ぎろんする間はなかった。「予言よげんの間ま」からの足音がますます増え、大きくなってきたのが聞こえた。大声で呼びかけて、自分たちの居い所どころを知らせてしまったと、ハリーが気づいたときにはすでに遅おそかった。
「来るんだ」
醜しゅう悪あくな赤ん坊頭の死喰い人がよたよたと動くのをそのままに、三人は部屋の反対側にある扉とびらに向かって駆かけ出した。黒いホールに戻るその扉は開いたままになっていた。
扉までの半分ほどの距離きょりを走ったとき、ハリーは、二人の死喰い人が黒いホールの向こうからこちらに向かって走ってくるのを、開いた扉から見た。進路しんろを左に変え、三人は暗いごたごたした小部屋に飛び込んで扉をバタンと閉めた。
「コロ――」ハーマイオニーが唱となえはじめたが、呪じゅ文もんが終る前に扉がバッと開き、二人の死喰い人が突とつ入にゅうしてきた。
勝ち誇ほこったように、二人が叫んだ。
「インペディメンタ 妨害ぼうがいせよ」
ハリー、ハーマイオニー、ネビルが三人とも仰向あおむけに吹っ飛んだ。ネビルは机を飛び越し、姿が見えなくなった。ハーマイオニーは本棚ほんだなに激突げきとつし、その上から分厚ぶあつい本が滝のようにどっと降ふり注いだ。ハリーは背後の石壁いしかべに後頭部を打ちつけ、目の前に星が飛び、しばらくは眩暈めまいと混乱こんらんで反撃はんげきどころではなかった。
「捕つかまえたぞ」ハリーの近くにいた死し喰くい人びとが叫さけんだ。「この場所は――」
「シレンシオ 黙だまれ」
ハーマイオニーの呪じゅ文もんで男の声が消えた。フードの穴から口だけは動かし続けていたが、何の音も出てこなかった。もう一人の死喰い人が男を押し退のけた。
「ペトリフィカス トタルス 石になれ」
二人目の死喰い人が杖つえを構かまえたとき、ハリーが叫さけんだ。両手も両足もぴたりと張りつき、死喰い人は、ハリーの足下あしもとの敷物しきものの上に前のめりに倒れ、棒ぼうのように動かなくなった。
「うまいわ、ハ――」
しかし、ハーマイオニーが黙だまらせた死喰い人が、急に杖を一振ひとふりした。紫むらさきの炎のようなものが閃ひらめき、ハーマイオニーの胸の表面をまっすぐに横切った。ハーマイオニーは驚おどろいたように「アッ」と小さく声を上げ、床にくずおれて動かなくなった。