「ハーマイオニー」赤ん坊頭の死し喰くい人びとが再びまごまごといなくなったので、ハリーはすぐさま、ハーマイオニーを揺ゆり動かしながら呼びかけた。「ハーマイオニー、目を覚まして……」
「あいづ、ハーミーニーになにじだんだろう」机の下から這はい出し、そばに膝ひざをついて、ネビルが言った。鼻がどんどん腫はれ上がり、鼻血がダラダラ流れている。
「わからない……」
ネビルはハーマイオニーの手首を探った。
「みゃぐだ、ハリー。みゃぐがあるど」
安あん堵ど感かんが力強く体を駆かけ巡めぐり、一いっ瞬しゅんハリーは頭がぼーっとした。
「生きてるんだね」
「ん、ぞう思う」
一瞬、間が空あき、ハリーはその間に足音が聞こえはしないかと耳を澄すませた。しかし、聞こえるのは、隣となりの部屋で赤ん坊頭の死喰い人がヒンヒン泣きながらまごついている音だけだった。
「ネビル。僕たち、出口からそう遠くはない」ハリーが囁ささやいた。「あの円形の部屋のすぐ隣となりにいるんだ……僕たちがあの部屋を通り、ほかの死喰い人が来る前に出口の扉とびらを見つけたら、君はハーマイオニーを連れて廊下ろうかを戻り、エレベーターに乗って……それで、誰か見つけてくれ……危険を知らせて……」
「ぞれで、ぎみはどうずるの」ネビルは鼻血を袖そでで拭ぬぐい、顔をしかめてハリーを見た。
「ほかのみんなを探さなきゃ」ハリーが言った。
「じゃ、ぼぐもいっじょにざがず」ネビルがきっぱりと言った。
「でも、ハーマイオニーが――」
「いっじょにづれでいげばいい」ネビルがしっかりと言った。「ぼぐが担がづぐ。ぎみのほうがぼぐより戦だだがいがじょーずだがら――」
ネビルは立ち上がってハーマイオニーの片腕かたうでをつかみ、ハリーを睨にらんだ。ハリーは逡巡ためらったが、もう一方いっぽうの腕をつかみ、ぐったりしたハーマイオニーの体をネビルの肩に担かつがせるのを手伝った。
「ちょっと待って」ハリーは床からハーマイオニーの杖つえを拾ひろい上げ、ネビルの手に押しつけた。「これを持っていたほうがいい」
ネビルはゆっくりと扉のほうに進みながら、折れてしまった自分の杖の切れ端はしを蹴けって脇わきに押しやった。
「ばあぢゃんに殺ごろざれぢゃう」ネビルはふがふが言った。しゃべっている間にも鼻血がボタボタ落ちた。「あれ、ぼぐのバパバパの杖づえなんだ」