「踵が折れたんだと思うよ。ポキッと言う音が聞こえたもン」ジニーの上に屈かがみ込みながら、ルーナが小声で言った。ルーナだけが無傷むきずらしい。「やつらが四人で追いかけてきて、あたしたち、惑星わくせいがいっぱいの暗い部屋に追い込まれたんだ。とっても変なとこだったよ。あたしたち、しばらく暗くら闇やみにぽっかり浮かんでたんだ――」

「ハリー、『臭くさい星』を見たぜ。」ロンはまだ弱々しくエヘヘと笑いながら言った。

「ハリー、わかるか 僕たち、『モー・クセー』を見たんだ――ハハハ――」

ロンの口の端に血の泡が膨ふくれ、弾はじけた。

「――とにかく、やつらの一人がジニーの足を捕つかまえたから、あたし、『粉こな々ごな呪じゅ文もん』を使って、そいつの目の前で冥めい王おう星せいをぶっとばしたんだ。だけど……」ルーナはしかたがなかったという顔をジニーに向けた。ジニーは目を閉じたまま、浅い息をしていた。

「それで、ロンのほうは」ハリーが恐こわ々ごわ聞いた。ロンはエヘヘと笑い続け、まだハリーのローブの前にぶら下がったままだった。

「ロンがどんな呪じゅ文もんでやられたのかわかんない」ルーナが悲しそうに言った。「だけど、ロンがちょっとおかしくなったんだ。連れてくるのが大変だったよ」

「ハリー」ロンがハリーの耳を引っ張って自分の口元に近づけ、相変わらずエヘヘと力なく笑いながら言った。「この子、誰だか知ってるか ハリー ルーニーだぜ……いかれたルーニー・ラブグッドさ……ハハハ……」

「ここを出なくちゃならない」ハリーがきっぱりと言った。「ルーナ、ジニーを支えられるかい」

「うん」ルーナは安全のために杖つえを耳の後ろに挟はさみ、片腕かたうでをジニーの腰に回して助け起こした。

「たかが踵かかとじゃない。自分で立てるわ」ジニーがイライラしたが、次の瞬しゅん間かんぐらりと横に倒れそうになり、ルーナにつかまった。ハリーは、何ヵ月か前にダドリーにそうしたように、ロンの腕を自分の肩に回した。そして周りを見回した。一回で正しい出口に出る確率かくりつは十二分の一だ――。

ロンを担かつぎ、ハリーは扉とびらの一つに向かった。あと一、二メートルというところで、ホールの反対側の別な扉が勢いよく開き、三人の死し喰くい人びとが飛び込こんできた。先頭はベラトリックス・レストレンジだ。

「いたぞ」ベラトリックスが甲高かんだかく叫さけんだ。

失しっ神しん光こう線せんが室内を飛んだ。ハリーは目の前の扉から突とつ入にゅうし、ロンをそこに無む造ぞう作さに放ほうり投げ、ネビルとハーマイオニーを助けに素早すばやく引き返した。全員が扉を通り、あわやというところで扉をピシャリと閉め、ベラトリックスを防ふせいだ。

「コロポータス 扉よ、くっつけ」ハリーが叫んだ。扉の向こうで三人が体当たりする音が聞こえた。

「かまわん」男の声がした。「ほかにも通路はある――捕つかまえたぞ。やつらはここだ」

ハリーはハッとして後ろを向いた。「脳のうの間ま」に戻っていた。たしかに壁かべ一面に扉がある。背後のホールから足音が聞こえた。最初の三人に加勢かせいするために、他の死喰い人たちが駆かけつけてきたのだ。

「ルーナ――ネビル――手伝ってくれ」

三人は猛烈もうれつな勢いで動き、扉という扉を封ふうじて回った。ハリーは次の扉に移動しようと急ぐあまり、テーブルに衝しょう突とつしてその上を転がった。

「コロポータス」