「ディフィンド 裂さけよ」
ハリーは目の前でロンに固く巻きついてゆく触手を断ち切ろうとしたが、切れない。ロンが縄目なわめに抵抗ていこうしてもがきながら倒れた。
「ハリー、ロンが窒息ちっそくしちゃうわ」踵かかとを折って動けないジニーが、床に座ったまま叫んだ――とたんに、死し喰くい人びとの一人が放はなった赤い閃光せんこうが、その顔を直ちょく撃げきした。ジニーは横よこざまに倒れ、その場で気を失った。
「ステュービフィ」ネビルが後ろを向き、襲おそってくる死喰い人に向かってハーマイオニーの杖つえを振った。「ステュービフィ ステュービフィ」
何事も起こらない。
死喰い人の一人が、逆ぎゃくにネビルに向かって「失しっ神しん呪じゅ文もん」を放はなった。わずかにネビルを逸それた。いまや五人の死喰い人と戦っているのは、ハリーとネビルだけだった。二人の死喰い人が銀色の光線を矢のように放ち、逸それはしたが、二人の背後の壁かべが抉えぐれて穴が空あいた。
ベラトリックス・レストレンジがハリーめがけて突進とっしんしてきた。ハリーは一いち目もく散さんに走った。予言の球を頭の上に高く掲かかげ、部屋の反対側へと全速力で駆かけ戻った。ハリーは、死喰い人たちをみんなから引き離はなすことしか考えられなかった。
うまくいったようだ。死喰い人はハリーを追って疾走しっそうしてくる。椅子をなぎ倒し、テーブルを撥はね飛ばしながら、それでも予言を傷きずつけることを恐れて、ハリーに向かって呪文をかけようとはしなかった。ハリーはただ一つだけ開いたままになっていた扉とびらから飛び出した。死喰い人たちが入ってきた扉だ。ハリーは祈いのった。ネビルがロンのそばにいて、なんとか解とき放つ方法を見つけてくれますよう。扉の向こう側の部屋に二、三歩走り込んだとたん、ハリーは床が消えるのを感じた――。
急な石段を、ハリーは一段、また一段とぶつかりながら転げ落ち、ついに一番底の窪くぼみに仰向あおむけに打ちつけられた。息が止まるほどの衝しょう撃げきだった。窪みには台座だいざが置かれ、石のアーチが建っていた。部屋中に死喰い人の笑い声が響ひびき渡った。見上げると、「脳のうの間ま」にいた五人が階段を下りてくるところだった。さらに他の死喰い人たちが、別の扉から現れ、石段から石段へと飛び移りながらハリーに迫せまっていた。ハリーは立ち上がった。しかし足がわなわな震ふるえ、ほとんど立っていられないくらいだった。予言は奇き跡せき的てきに壊こわれず、ハリーの左手にあった。右手はしっかりと杖を握にぎっている。ハリーは周囲に目を配り、死喰い人を全員視し野やに入れるようにしながら、後退あとずさりした。脚あしの裏側うらがわに固いものが当たった。アーチが建っている台座だ。ハリーは後ろ向きのまま台座に上がった。