死喰い人全員が、ハリーを見み据すえて立ち止まった。何人かはハリーと同じように息を切らしている。一人はひどく出血していた。「全ぜん身しん金かな縛しばり術じゅつ」が解とけたドロホフが、杖をまっすぐハリーの顔に向け、ニヤニヤ笑っている。
「ポッター、もはやこれまでだな」ルシウス・マルフォイが気取った声でそう言うと、覆面ふくめんを脱ぬいだ。「さあ、いい子だ。予言を渡せ」
「ほ――ほかのみんなは逃がしてくれ。そうすればこれを渡す」ハリーは必死だった。
死喰い人の何人かが笑った。
「おまえは取とり引ひきできる立場にはないぞ、ポッター」ルシウス・マルフォイの青白い顔が喜びで輝かがやいていた。「見てのとおり、我らは十人、おまえは一人だ……。それとも、ダンブルドアは数の数え方を教えなかったのか」
「一人ひどりじゃのいぞ」上のほうで叫さけぶ声がした。「まだ、ぼぐがいる」
ハリーはがっかりした。ネビルが不器用に石段を下りてくる。震ふるえる手に、ハーマイオニーの杖つえをしっかり握にぎっていた。
「ネビル――ダメだ――ロンのところへ戻れ」
「ステュービフィ」杖を死し喰くい人びとの一人一人に向けながら、ネビルがまた叫んだ。「ステュービフィ ステュービ――」
中でも大柄おおがらな死喰い人が、ネビルを後ろから羽は交がい締じめにした。ネビルは足をバタバタさせてもがいた。数人の死喰い人が笑った。
「そいつはロングボトムだな」ルシウス・マルフォイがせせら笑った。「まあ、おまえのばあさんは、我々の目的のために家族を失うことには慣れている……おまえが死んだところで大したショックにはなるまい」
「ロングボトム」ベラトリックスが聞き返した。邪悪じゃあくそのものの笑みが、落ち窪くぼんだ顔を輝かせた。「おや、おや、坊ぼっちゃん、私はおまえの両親とお目にかかる喜ばしい機会きかいがあってね」
「知じっでるぞ」ネビルが吠ほえ、羽交い絞めにしている死喰い人に激はげしく抵抗ていこうした。男が叫んだ。「誰か、こいつを失神しっしんさせろ」
「いや、いや、いや」ベラトリックスが言った。有う頂ちょう天てんになっている。興こう奮ふんで生き生きした顔でハリーを一瞥いちべつし、またネビルに視線しせんを戻した。「いーや。両親と同じように気が触ふれるまで、どのぐらい持ち堪こたえられるか、やってみようじゃないか……それともポッターが予言をこっちへ渡すというなら別だが」
「わだじじゃだみだ」ネビルは我を忘れて喚わめいた。ベラトリックスが杖を構かまえ、自分と自分を捕つかまえている死喰い人に近づく間も、足をバタつかせ、全身を捩よじって抵抗した。「あいづらに、ぞれをわだじじゃだみだ、ハリー」
ベラトリックスが杖を上げた。
「クルーシオ 苦しめ」