ダンブルドアがたちまち石段を駆かけ下り、ネビルとハリーのそばを通り過ぎて行った。二人とも、もうここを出ることなど考えていなかった。ダンブルドアはすでに石段の下にいた。一番近くにいた死し喰くい人びとがその姿に気づき、叫さけんで仲間なかまに知らせた。一人の死喰い人が、慌あわてて逃げ出した。反対側の石段を、猿さるがもがくような格好かっこうで登って行く。ダンブルドアの呪じゅ文もんが、いともやすやすと、まるで見えない糸でひっかけたかのように男を引き戻した――。
ただ一ひと組だけは、この新しい登とう場じょう者しゃに気づかないらしく、戦い続けていた。ハリーはシリウスがベラトリックスの赤い閃光せんこうをかわすのを見た。ベラトリックスに向かって笑っている。
「さあ、来い。こんどはもう少しうまくやってくれ」シリウスが叫んだ。その声が、広々とした空間に響ひびき渡った。
二番目の閃光がまっすぐシリウスの胸に当たった。
シリウスの顔からは、まだ笑いが消えてはいなかったが、衝しょう撃げきでその目は大きく見開かれた。
ハリーは無意識にネビルを放はなした。杖を引き抜き、階段を飛び下りた。ダンブルドアも台座だいざに向かっていた。
シリウスが倒れるまでに、永遠の時が流れたかのようだった。シリウスの体は優雅ゆうがな弧こを描き、アーチに掛かかっている古ぼけたベールを突き抜け、仰向あおむけに沈んで行った。
かつてあんなにハンサムだった名な付づけ親おやのやつれ果てた顔が、恐れと驚おどろきの入り交まじった表情を浮かべて、古びたアーチをくぐり、ベールの彼方かなたへと消えて行くのを、ハリーは見た。ベールは一いっ瞬しゅん、強い風に吹かれたかのようにはためき、そしてまた元どおりになった。
ハリーはベラトリックス・レストレンジの勝ち誇ほこった叫びを聞いた。しかし、それは何の意味もない。僕にはわかっている――シリウスはただ、このアーチの向こうに倒れただけだ。いますぐ向こう側から出てくる……。
しかし、シリウスは出てこなかった。
「シリウス」ハリーが叫んだ。「シリウス」
激はげしく喘あえぎながら、ハリーは階段下に立っていた。シリウスはあのベールのすぐ裏うらにいるに違いない。僕が引き戻す……。
しかし、ハリーが台座だいざに向かって駆かけ出すと、ルーピンがハリーの胸に腕を回して引き戻した。
「ハリー、もう君にはどうすることもできない――」
「連れ戻して。助けて。向こう側に行っただけじゃないか」
「――もう遅おそいんだ、ハリー」
「いまならまだ届くよ――」ハリーは激はげしくもがいた。しかし、ルーピンは腕を離はなさなかった……。
「もう、どうすることもできないんだ。ハリー……どうすることも……あいつは行ってしまった」
小天狼星只是跌进了拱门里,他随时都可能再从另一边出来……但是小天狼星没有出现。
“抓住他,救救他,他不过是刚刚走了进去!”
“太晚了,哈利—— ”
“已经没有办法了,哈利……没有办法……他走了。”