「シリウスはどこにも行ってない」ハリーが叫さけんだ。
信じられなかった。信じてなるものか。ありったけの力で、ハリーはルーピンに抵抗ていこうし続けた。ルーピンはわかっていない。あのベールの陰かげに人が隠れているんだ。最初にこの部屋に入ったとき、人の囁ささやき声を聞いたもの。シリウスは隠れているだけだ。ただ見えないところに潜ひそんでいるだけだ。
「シリウス」ハリーは絶ぜっ叫きょうした。「シリウス」
「あいつは戻ってこられないんだ、ハリー」なんとかしてハリーを抑おさえようとしながら、ルーピンが涙声になった。「あいつは戻れない。だって、あいつは――死」
「シリウスは――死んでなんか――いない」ハリーが喚わめいた。「シリウス」
二人の周囲で動きが続いていた。無意味な騒ぎ。呪じゅ文もんの閃光せんこう。ハリーにとっては何の意味もない騒音そうおん。逸それた呪文が二人のそばを飛んでいったが、どうでもよかった。すべてがどうでもよかった。ただ、ルーピンに嘘うそはやめてほしい。シリウスはすぐそこに、あの古ぼけたベールの裏うらに立っているのに――いまにもそこから現れるのに――黒くろ髪かみを後ろに振り払い、意い気き揚よ々うと戦いに戻ろうとするのに――そうじゃないふりをするのはやめてほしい。
ルーピンはハリーを台座だいざから引き離はなした。ハリーはアーチを見つめたまま、こんどはシリウスに腹を立てていた。こんなに待たせるなんて――。
しかし、ルーピンを振り解ほどこうともがきながらも、心のどこかでハリーにはわかっていた。シリウスはいままで僕を待たせたことなんてなかった……どんな危険を冒おかしてでも、必ず僕に会いにきた。助けにきた……ハリーが命を懸かけて、こんなにシリウスを呼んでいるのに、シリウスがあのアーチから姿を現さないなら、理由は一つしかない。シリウスは帰ってくることができないのだ……シリウスは本当に――。
ダンブルドアはほとんどの死し喰くい人びとを部屋の中央に一束ひとたばにして、見えない縄なわで拘束こうそくしたようだった。マッド‐アイ・ムーディが、部屋の向こうからトンクスの倒れている場所まで這はって行き、トンクスを蘇生そせいさせようとしていた。台座の向こうではまだ閃光が飛び、呻うめき声、叫び声がした。――キングズリーが、シリウスのあとを受け、ベラトリックスと対決たいけつするため躍おどり出た。
「ハリー」
ネビルが一段ずつ石段を滑すべり降おり、ハリーのそばに来ていた。ハリーはもう抵抗していなかったが、ルーピンはそれでも念ねんのためハリーの腕をしっかり押さえていた。
「ハリー……ほんどにごべんね……」ネビルが言った。両足がまだどうしようもなく踊おどっている。「あのひど――ジリウズ・ブラッグ――ぎみのどもだぢだっだの」
ハリーは頷うなずいた。
小天狼星藏起来了,不过是藏在人们看不到的地方。