ハリーは走った。しかしベラトリックスは、その扉を出るとピシャリと閉めた。壁かべがすでに回りはじめていた。またしてもハリーは、ぐるぐる回る壁の燭しょく台だいから出る、青い光の筋すじに取り囲まれていた。
「出口はどこだ」壁が再びゴトゴトと止まったとき、ハリーは捨すて鉢ばちになって叫んだ。「出口はどこなんだ」
部屋はハリーが尋たずねるのを待っていたかのようだった。真後ろの扉がパッと開き、エレベーターへの通路が見えた。松明たいまつの灯あかりに照らされ、人影はない。ハリーは走った……。
前方でエレベーターのガタゴト言う音が聞こえた。ハリーは廊下ろうかを疾走しっそうし、勢いよく角を曲がり、別のエレベーターを呼ぶボタンを拳こぶしで叩たたいた。ジャラジャラと音を立てながら、エレベーターが下りてきた。格こう子し戸どが開くなりハリーは飛び乗って、「アトリウム」のボタンを叩いた。ドアがスルスルと閉まり、ハリーは昇のぼって行った……。
格子戸が完全に開かないうちに隙間すきまから無理やり体を押し出し、ハリーはあたりを見回した。ベラトリックスは、もうほとんどホールの向こうの電話ボックス・エレベーターにたどり着いていた。しかし、ハリーが全速力で追うと、振り返ってハリーを狙ねらい、呪じゅ文もんを放はなった。ハリーは「魔ま法ほう界かいの同胞どうほうの泉」の陰かげに隠れてそれをかわした。呪文はハリーを飛び越し、アトリウムの奥にある金のゲートに当たった。ゲートは鐘かねが鳴るような音を出した。もう足音がしない。ベラトリックスは走るのをやめていた。ハリーは泉の立像りつぞうの陰に蹲うずくまって、耳を澄すませた。
「出てこい、出てこい、ハリーちゃん」ベラトリックスが赤ちゃん声を作って呼びかけた。磨みがき上げられた木の床に、その声が響ひびいた。「どうして私を追ってきたんだい 私のかわいい従弟いとこの敵かたきを討うちにきたんじゃないのかい」
「そうだ」ハリーの声が、何十人ものハリーの幽霊ゆうれいと合がっ唱しょうするように、部屋中にこだました。「そうだ そうだ そうだ」
「あぁぁぁぁぁ……あいつを愛してたのかい ポッター赤ちゃん」
これまでにない激はげしい憎にくしみが、ハリーの胸に湧わき上がった。噴水ふんすいの陰から飛び出し、ハリーが大声で叫さけんだ。「クルーシオ 苦しめ」
“哈哈……你很爱他吗,波特小宝贝?”