背の高い、痩やせた姿が黒いフードを被かぶっていた。恐ろしい蛇へびのような顔は蒼そう白はくで落ち窪くぼみ、縦たてに裂さけたような瞳孔どうこうの真まっ赤かな両眼が睨にらんでいる……ヴォルデモート卿きょうが、ホールの真ん中に姿を現していた。杖つえをハリーに向けている。ハリーは凍こおりついたように動けなかった。
「そうか、おまえが俺様おれさまの予言を壊こわしたのだな」ヴォルデモートは非情な赤い目でハリーを睨みつけながら、静かに言った。「いや、ベラ、こいつは嘘うそをついてはいない……こいつの愚ぐにもつかぬ心の中から、真実が俺様を見つめているのが見えるのだ……何ヵ月もの準備、何ヵ月もの苦労……その挙句あげく、わが死し喰くい人びとたちは、またしても、ハリー・ポッターが俺様を挫くじくのを許した……」
「ご主人様、申し訳ありません。私は知りませんでした。動物もどきのブラックと戦っていたのです」ゆっくりと近づくヴォルデモートの足元に身を投げ出し、ベラトリックスが啜すすり泣いた。「ご主人様、おわかりくださいませ――」
「黙だまれ、ベラ」ヴォルデモートの声が危険をはらんだ。「おまえの始末はすぐつけてやる。俺様が魔法省に来たのは、おまえの女め々めしい弁解べんかいを聞くためだとでも思うのか」
「でも、ご主人様――あの人がここに――あの人が下に――」
ヴォルデモートは一顧いっこだにしなかった。
「ポッター、俺様はこれ以上何もおまえに言うことはない」ヴォルデモートが静かに言った。
「おまえはあまりにもしばしば、あまりにも長きにわたって、俺様を苛立いらだたせてきた。『アバダ ケダブラ』」
ハリーは抵抗ていこうのために口を開くことさえしていなかった。頭が真っ白で、杖はだらりと下を向いたままだった。
ところが、首なしになった黄金の魔法使い像が突如とつじょ立ち上がり、台座だいざから飛び上がると、ドスンと音を立ててハリーとヴォルデモートの間に着地した。立像りつぞうが両腕を広げてハリーを護まもり、呪じゅ文もんは立像の胸に当たって撥はね返っただけだった。
「なんと――」ヴォルデモートが周囲に目を凝こらした。そして、息を殺して言った。「ダンブルドアか」
ハリーは胸を高鳴たかならせて振り返った。ダンブルドアが金色こんじきのゲートの前に立っていた。