銀色の盾の陰かげから、またしても緑の閃光せんこうが走った。こんどは、ダンブルドアの前に疾駆してきた片腕かたうでのケンタウルスがそれを受け、粉々こなごなに砕くだけた。そのかけらがまだ床に落ちないうちに、ダンブルドアが杖をぐっと引き、鞭むちのように振り動かした。細長い炎が杖つえ先さきから飛び出し、ヴォルデモートを盾たてごと絡からめ取った。一いっ瞬しゅん、ダンブルドアの勝ちだと思われた。しかし、そのとき、炎のロープが蛇へびに変わり、たちまちヴォルデモートの縄目なわめを解とき、激はげしくシューシューと鎌首かまくびをもたげてダンブルドアに立ち向かった。
ヴォルデモートの姿が消えた。蛇が床から伸び上がり、攻撃こうげきの姿勢を取った――。
ダンブルドアの頭上で炎が燃え上がった。同時にヴォルデモートがまた姿を現し、さっきまで五体の像が立っていた噴水ふんすいの真ん中の台座だいざに立っていた。
「あぶない」ハリーが叫さけんだ。
しかし、すでにヴォルデモートの杖つえから、またしても緑の閃光せんこうがダンブルドアめがけて飛び、蛇が襲おそいかかっていた。
フォークスがダンブルドアの前に急きゅう降こう下かし、嘴くちばしを大きく開あけて緑の閃光を丸呑まるのみした。そして炎となって燃え上がり、床に落ち、小さく萎しなびて飛ばなくなった。そのときダンブルドアが杖を一振りした。長い、流れるような動きだった。――まさに、ダンブルドアにがぶりと牙きばを突つき立てようとしていた蛇が、空中高く吹き飛び、一ひと筋すじの黒い煙となって消えた。そして、泉の水が立ち上がり、溶とけたガラスの繭まゆのようにヴォルデモートを包み込んだ。
わずかの間、ヴォルデモートは、さざなみのように揺ゆれるぼんやりした顔のない影となり、台座の上でちらちら揺らめいていた。息を詰つまらせる水を払い退のけようと、明らかにもがいている――。
やがて、その姿が消えた。水がすさまじい音を立てて再び泉に落ち、水すい盆ぼんの縁ふちから激しくこぼれて磨みがかれた床をびしょ濡ぬれにした。
「ご主人様」ベラトリックスが絶ぜっ叫きょうした。