「僕の最大の強み。そうですか」クィディッチ競技場を見つめながら、もう見てはいなかった。声が震ふるえていた。「何にもわからないくせに……知らないくせに……」
「わしが何を知らないと言うのじゃ」ダンブルドアが静かに聞いた。
もうたくさんだ。ハリーは怒りに震えながら振り向いた。
「僕の気持なんて話したくない ほっといて」
「ハリー、そのように苦しむのは、きみがまだ人間だという証あかしじゃ この苦痛こそ、人間であることの一部なのじゃ――」
「なら――僕は――人間で――いるのは――いやだ」
ハリーは吠ほえ哮たけり、脇わきの華奢きゃしゃな脚あしのテーブルから繊細せんさいな銀の道具をひっつかみ、部屋の向こうに投げつけた。道具は壁かべに当たり、粉々こなごなに砕くだけた。肖しょう像ぞう画がの何人かが、怒りや恐きょう怖ふに叫さけび、アーマンド・ディペットの肖像画が声を上げた。
「やれまあ」
「かまうもんか」ハリーは肖像画たちに向かって怒ど鳴なり、望ぼう月げつ鏡きょうをひったくって暖炉だんろに投げ入れた。「たくさんだ もう見たくもない やめたい 終りにしてくれ 何もかも、もうどうでもいい――」
ハリーは銀の道具類が載のったテーブルをつかみ、それも投げつけた。テーブルは床に当たってばらばらになり、脚があちこちに転がった。
「どうでもよいはずはない」ダンブルドアが言った。ハリーが自分の部屋を破は壊かいしても、たじろぎもせず、まったく止めようともしない。静かな、ほとんど超ちょう然ぜんとした表情だ。「気にするからこそ、その痛みで、きみの心は死ぬほど血を流しているのじゃ」
「僕は――気にしてない」
ハリーが絶ぜっ叫きょうした。喉のどが張り裂さけたかと思うほどの大声だった。一いっ瞬しゅん、ハリーは、ダンブルドアに突っかかり、叩たたき壊こわしてやりたいと思った。あの落ち着きはらった年寄り面づらを打ち砕くだき、動揺どうようさせ、傷きずつけ、自分の中の恐きょう怖ふのほんの一部でもいいから味わわせてやりたい。
「いいや、気にしておる」ダンブルドアは一層いっそう静かに言った。「きみはいまや、母親を、父親を、そしてきみにとっては初めての、両親に一番近い者として慕したっていた人までも失ったのじゃ。気にせぬはずがあろうか」
「僕の気持がわかってたまるか」ハリーが吠ほえ叫さけんだ。「先生は――ただ平気でそこに――先生なんかに――」
しかし、言葉ではもう足りなかった。物を投げつけても何の役にも立たなかった。走りたい。走って、走って、二度と振り向かないで、自分を見つめるその澄すんだ青い目が、その憎にくらしい落ち着きはらった年寄りの顔が見えないどこかに行きたかった。ハリーは扉とびらに駆かけ寄り、再び取っ手をつかんでぐいと捻ねじった。
しかし扉は開かなかった。
ハリーはダンブルドアを振り返った。
「出してください」ハリーは頭のてっぺんから爪先つまさきまで震ふるえていた。
「だめじゃ」ダンブルドアはそれだけしか言わなかった。
数秒間、二人は見つめ合っていた。
「出してください」もう一度ハリーが言った。
「だめじゃ」ダンブルドアが繰くり返した。
「そうしないと――僕をここに引き止めておくなら――もし、僕を出して――」
「かまわぬ。わしの持ち物を破は壊かいし続けるがよい」ダンブルドアが穏おだやかに言った。「持ち物がむしろ多すぎるのでな」
ダンブルドアは自分の机に歩いて行き、その向こう側に腰掛こしかけてハリーを眺ながめた。
“我不知道什么?”邓布利多平静地问。太过分了。哈利转过身来,气得浑身发抖。“我不想讨论我的感受,可以吗?”
“你不了解我的感受!”哈利咆哮着,”你—— 站在那里—— 你——”
但是怒吼解决不了问题,砸东西也没有更多的帮助。他想跑,他想一直跑下去,不再回头看那张可恶的平静的老脸;他想去一个地方,再也见不到那双湛蓝的盯着自己的眼睛。他猛地一转身跑到门口,再次握住门把手,猛地一扭。门还是没有打开。哈利又转过身冲着邓布利多。
”让我出去。“他浑身颤抖着说。
”不行。“邓布利多简短地说。他们相互盯着对方,对视了几秒钟。
”让我出去。“哈利又说。
”不行。“邓布利多重复了一遍。
“尽情毁掉我的财物吧。”邓布利多沉着地说,“我敢说我的财物太多了。”