ハリーは目を閉じた。シリウスを助けに行かなかったら、シリウスは死ななかったろう……答えを求めるというより、むしろ、シリウスのことをまた考えてしまう瞬しゅん間かんを避さけたいという思いから、ハリーは質問した。「予言の最後は……たしか……一方いっぽうが生きるかぎり……」
「……他方たほうは生きられぬ」ダンブルドアが言った。
「それじゃ」心の中の深い絶望ぜつぼうの井戸の底から言葉を浚さらうように、ハリーは言った。「それじゃ、その意味は……最後には……二人のうちどちらかが、もう一人を殺さなければならない……」
「そうじゃ」ダンブルドアが言った。
二人とも、長い間無言だった。校長室の壁かべの向こう、どこか遥はるか彼方かなたから、大広間に早めに朝食に向かうのだろうか、生徒たちの声がハリーの耳に聞こえてきた。この世の中に、食事がしたいと思う人間がまだいるなんて。笑う人間がいるなんて。シリウス・ブラックが永遠にいなくなったことを知らず、気にもかけない人間がいるなんて、ありえないことのように思われた。シリウスはもう、何百万キロも彼方に行ってしまったような気がする。いまでも、心のどこかで、ハリーは信じていた。あのベールを僕が開けてさえいたら、シリウスがそこにいて、僕を見返して挨あい拶さつしたかもしれない……たぶん、あの吼ほえるような笑い声で……。
「もう一つ、ハリー、わしはきみに釈しゃく明めいせねばならぬ」ダンブルドアが迷いながら言った。
「きみは、たぶん、なぜわしがきみを監かん督とく生せいに選ばなかったかと訝いぶかったのではないかな 白はく状じょうせねばなるまい……わしは、こう思ったのじゃ……きみはもう、十分すぎるほどの責任を背せ負おっていると」
ハリーはダンブルドアを見上げた。その顔に一ひと筋すじの涙が流れ、長い銀色の鬚ひげに滴したたるのが見えた。
“我觉得我还欠你另一个解释,哈利,”邓布利多吞吞吐吐地说,“你曾经也许纳闷为什么我没有把你选为级长?我必须承认……我更认为……你已经有太多的责任需要承担。”