言われるまでもなく、ハリーは杖をローブの内ポケットにしまい、スネイプとマルフォイのほうには目もくれず、まっすぐに正面扉とびらに向かった。
ハグリッドの小屋に向かって芝生しばふを歩いて行くと、陽ひ射ざしが痛いほど照りつけた。生徒たちは、芝生に寝ねそべって日向ひなたぼっこをしたり、しゃべったり、「予よ言げん者しゃ新しん聞ぶん日にち曜よう版ばん」を読んだり、甘い物を食べたりしながら、通り過ぎるハリーを見上げた。呼びかけたり、手を振ったりする生徒もいた。「予言者新聞」と同じように、みんながハリーを英雄のように思っていることを、熱心に示そうとしているのだ。ハリーは誰にも何も言わなかった。三日前に何が起こったのか、みんながどれだけ知っているかはわからなかったが、ハリーはこれまで質問されるのを避さけてきたし、そうしておくほうがよかったのだ。
ハグリッドの小屋の戸を叩たたいたとき、最初は留守かと思った。しかし、ファングが物陰ものかげから突進とっしんしてきて大だい歓かん迎げいし、ハリーは突き飛ばされそうになった。ハグリッドは裏庭うらにわでインゲン豆を摘つんでいたらしい。
「よう、ハリー」ハリーが柵さくに近づいて行くと、ハグリッドがにっこりした。「さあ、入った、入った。タンポポジュースでも飲もうや……」
「調子はどうだ」木のテーブルに冷たいジュースを一杯ずつ置いて腰掛こしかけたとき、ハグリッドが聞いた。「おまえさん――あー――元気か ん」
ハグリッドの心配そうな顔から、体が元気かどうかと聞いているのではないことはわかった。
「元気だよ」ハリーは急いで答えた。ハグリッドが何を考えているかはわかっていたが、その話をするのには耐たえられなかった。「それで、ハグリッドはどこへ行ってたの」
「山ん中に隠れとった」ハグリッドが答えた。「洞穴ほらあなだ。ほれ、シリウスがあのとき――」
ハグリッドは急に口を閉じ、荒っぽい咳払せきばらいをしてハリーをちらりと見ながら、ぐーっとジュースを飲んだ。
「とにかく、もう戻ってきた」ハグリッドが弱々しい声で言った。
「ハグリッドの顔――前よりよくなったね」ハリーは何がなんでも話題をシリウスから逸そらそうとした。
「なん……」ハグリッドは巨大な片手かたてを上げ、顔を撫なでた。「ああ――うん、そりゃ。グローピーはずいぶんと行ぎょう儀ぎがようなった。ずいぶんとな。俺おれが帰ってきたのを見て、そりゃあうれしかったみてえで……あいつはいい若者わかもんだ、うん……誰か女友達を見つけてやらにゃあと考えとるんだが、うん……」
いつものハリーなら、そんなことはやめるようにと、すぐにハグリッドを説得せっとくしようとしただろう。禁じられた森に二人目の巨人が棲すむかもしれず、しかもグロウプよりもっと乱暴で残酷ざんこくかもしれないというのは、どう考えても危険だ。しかし、それを議論ぎろんするだけの力を、なぜか奮ふるい起こすことができない。ハリーはまた独ひとりになりたくなってきた。早くここから出て行けるようにと、ハリーはタンポポジュースをガブガブ飲み、グラスの半分ほどを空からにした。
“太好了,哈利!”海格冲着朝栅栏走过来的哈利喜气洋洋地嚷道,“进来,快进来,让我们来一杯蒲公英果汁……”
“你还好吧?”他们在木桌旁坐下来,每人面前放着一杯冰果汁,海格问道,“你感觉—— 还不错吧,是吗?”
哈利从他一脸关切的表情知道他不是在问自己身体是否健康。
“我很好,”哈利赶忙说,他知道海格脑子里装的是什么,他不想去谈那些事情,“那么,你到哪儿去了?”
“一直在外面的山里躲着呢,”海格说,“上面的一个山洞里,就像小天狼星当初一样—— ”