しかし、ハリーは、まったく宴会に行くつもりがなかった……。
用もないときには、ここはゴーストが溢あふれているというのに、いったいいまは……。
ハリーは階段を走り下り、廊下を走った。しかし、生きたものにも死んだものにも出会わない。全員が大広間にいるに違いない。「呪じゅ文もん学がく」の教室の前で、ハリーは立ち止まり、息を切らし、落胆らくたんしながら考えた。終るまで待たなくちゃ。宴会が終るまで……。
すっかり諦あきらめたそのとき、ハリーは見た――廊下の向こうで、透とう明めいな何かがふわふわ漂ただよっている。
「おーい――おい、ニック ニック」
ゴーストが壁かべから首を抜き出した。派は手でな羽は根ね飾かざりの帽子ぼうしと、ぐらぐら危険に揺ゆれる頭が現れた。ニコラス・ド・ミムジー・ポーピントン卿きょうだ。
「こんばんは」ゴーストは固い壁から残りの体を引っ張り出し、ハリーに笑いかけた。「すると、行き損そこねたのは私だけではなかったのですな しかし……」ニックがため息をついた。
「もちろん、私はいつまでも逝き損ねですが……」
「ニック、聞きたいことがあるんだけど」
「ほとんど首無しニック」の顔に、えも言われぬ奇き妙みょうな表情が浮かんだ。ニックはひだ襟えりに指を差し入れ、引っ張って少しまっすぐにした。考える時間を稼かせいでいるらしい。一部だけ繋つながっている首が完全に切れそうになったとき、ニックはやっと襟をいじるのをやめた。
「えー――いまですか、ハリー」ニックが当惑とうわくした顔をした。「宴会のあとまで待てないですか」
「待てない――ニック――お願いだ」ハリーが言った。「どうしても君と話したいんだ。ここに入れる」
ハリーは一番近くの教室のドアを開けた。「ほとんど首無しニック」がため息をついた。
「ええ、いいでしょう」ニックは諦めたような顔をした。「予想していなかったふりはできません」
ハリーはニックのためにドアを押さえて待ったが、ニックはドアからでなく、壁を通り抜けて入った。
「予想って、何を」ドアを閉めながら、ハリーが聞いた。
「あなたが、私を探しにやってくることです」ニックはするすると窓際まどぎわに進み、だんだん闇やみの濃こくなる校庭を眺ながめた。「ときどきあることです……誰かが……哀悼あいとうしているとき」
「そうなんだ」ハリーは話を逸そらせまいとした。「そのとおりなんだ。僕――僕、君を探していた」
ニックは無言だった。
「つまり――」ハリーは、思ったよりずっと言い出しにくいことに気づいた。「つまり――君は死んでる。でも、君はまだここにいる。そうだろう」
ニックはため息をつき、校庭を見つめ続けた。
“嘿—— 嘿,尼克!尼克!”幽灵从墙里面退出头来,露出十分夸张的羽毛帽子和危险地摇晃着的脑袋,是尼古拉斯·德·敏西·波平顿爵士。