「先生を学校に連れて帰らなければなりません……マダム・ポンフリーが……」
「いや」ダンブルドアが言った。
「必要なのは……スネイプ先生じゃ……しかし、どうやら……いまのわしは遠くまでは歩けぬ……」
「わかりました……先生、いいですか……僕がどこかの家のドアを叩たたいて、先生が休めるところを見つけます――それから走っていって、連れてきます。マダム……」
「セブルスじゃ」ダンブルドアがはっきりと言った。「セブルスが必要じゃ……」
「わかりました。それじゃスネイプを――でも、しばらく先生を一人にしないと――」
しかし、ハリーが行動を起こさないうちに、誰だれかの走る足音が聞こえた。ハリーは心が躍おどった。誰だれかが、見つけてくれた。助けが必要なことに気づいてくれた――見回すと、マダム・ロスメルタが暗い通りを小走りに駆かけてくるのが見えた。踵かかとの高いふわふわした室しつ内ない履ばきを履き、ドラゴンの刺し繍しゅうをした絹きぬの部屋着を着ている。
「寝室しんしつのカーテンを閉めようとしていたら、あなたが『姿すがた現あらわし』するのが見えたの! よかった、よかったわ。どうしたらいいのかわからなくて――まあ、アルバスに何かあったの?」
マダム・ロスメルタは息を切らしながら立ち止まり、目を見開いてダンブルドアを見下ろした。
「けがをしてるんです」ハリーが言った。
「マダム・ロスメルタ、僕が学校に行って助けを呼んでくるまで、先生を『三本の箒ほうき』で休ませてくれますか?」
「一人で学校に行くなんてできないわ! わからないの――? 見なかったの――?」
「一いっ緒しょに先生を支えてくだされば」ハリーは、ロスメルタの言ったことを聞いていなかった。
「中まで運べると思います――」
「何があったのじゃ?」ダンブルドアが聞いた。「ロスメルタ、何かあったのか?」
「や――『闇やみの印しるし』よ、アルバス」
そして、マダム・ロスメルタはホグワーツの方角の空を指差した。その言葉で背筋せすじがぞっと寒くなり、ハリーは振り返って空を見た。