「おまえをデザートにいただこうか。ダンブルドア」
「だめだ」四人目の死喰い人が鋭するどく言った。厚ぼったい野蛮やばんな顔をした男だ。
「我々は命令を受けている。ドラコがやらねばならない。さあ、ドラコ、急げ」
マルフォイはいっそう気が挫くじけ、怯おびえた目でダンブルドアの顔を見つめていた。ダンブルドアはますます蒼あおざめ、防壁ぼうへきに寄り掛かかった体がさらにずり落ちたせいで、いつもより低い位置に顔があった。
「俺おれに言わせりゃ、こいつはどうせもう長い命じゃない!」
歪ゆがんだ顔の男が言うと、妹がグググッと笑って相槌あいづちを打った。
「なんてざまだ――いったいどうしたんだね、ダンビー?」
「ああ、アミカス、抵てい抗こう力りょくが弱り、反はん射しゃ神しん経けいが鈍にぶくなってのう」ダンブルドアが言った。
「要するに、歳としじゃよ……そのうち、おそらく、きみも歳を取る……きみが幸運ならばじゃが……」
「何が言いたいんだ? え? 何が言いたいんだ?」男は急に乱暴になった。
「相変わらずだな、え? ダンビー。口ばかりで何もしない。なんにも。闇やみの帝てい王おうが、なぜわざわざおまえを殺そうとするのか、わからん! さあ、ドラコ、やれ!」
しかしそのとき、またしても下から、気ぜわしく動く音、大声で叫さけぶ声が聞こえた。
「連中が階段を封鎖ふうさした――レダクト! 粉々こなごな!」
ハリーは心が躍おどった。この四人が相手を全滅ぜんめつさせたわけじゃない。戦いを抜け出して塔とうの屋上に来ただけだ。そしてどうやら、背後に障しょう壁へきを作ってきたらしい――。
「さあ、ドラコ、早く!」野蛮やばんな顔の男が、怒ったように言った。
しかし、マルフォイの手はどうしようもなく震ふるえ、狙ねらいさえ定められなかった。
「俺がやる」
グレイバックが両手を突き出し、牙きばをむいて唸うなりながら、ダンブルドアに向かっていった。
「だめだと言ったはずだ!」
野蛮な顔の男が叫んだ。閃光せんこうが走り、狼おおかみ男おとこが吹き飛ばされた。グレイバックは防壁に衝しょう突とつし、憤怒ふんぬの形ぎょう相そうでよろめいた。ハリーの胸は激はげしく動悸どうきし、ダンブルドアの呪じゅ文もんに閉じ込められてそこにいる自分の気配を、そばの誰だれかが聞きつけないはずはないと思われた――動けさえしたら、「透とう明めいマント」の下から呪のろいをかけられるのに――。