「スネイプ!」
いちばんショックを受けた様子のスラグホーンが、青い顔に汗を滲にじませ、吐はき捨てるように言った。
「スネイプ! わたしの教え子だ! あいつのことは知っているつもりだった!」
しかし、誰もそれに反応しないうちに、壁かべの高いところから、鋭するどい声がした。短い黒い前髪まえがみを垂たらした土つち気け色いろの顔の魔法使いが、空からの額縁がくぶちに戻もどってきたところだった。
「ミネルバ、魔法大臣は間もなく到着するだろう。大臣は魔法省から、いましがた『姿すがたくらまし』した」
「ありがとう、エバラード」
マクゴナガル先生は礼を述べ、急いで寮りょう監かんの先生方のほうを向いた。
「大臣が着く前に、ホグワーツがどうなるかをお話ししておきたいのです」
マクゴナガル先生が早口に言った。
「私わたくし個人としては、来年度も学校を続けるべきかどうか、確信かくしんがありません。一人の教師の手にかかって校長が亡くなったのは、ホグワーツの歴史にとって、とんでもない汚点おてんです。恐ろしいことです」
「ダンブルドアは間違いなく、学校の存続そんぞくをお望みだったろうと思います」
スプラウト先生が言った。
「たった一人でも学びたい生徒がいれば、学校はその生徒のために存続すべきでしょう」
「しかし、こういうことのあとで、一人でも生徒が来るだろうか?」
スラグホーンが、シルクのハンカチを額ひたいの汗に押し当てながら言った。
「親が子供を家に置いておきたいと望むだろうし、そういう親を責せめることはできない。個人的には、ホグワーツがほかと比べてより危険だとは思わんが、母親たちもそのように考えるとは期待できないでしょう。家族をそばに置きたいと願うでしょうな。自然なことだ」
「私わたくしも同感です」マクゴナガル先生が言った。
「それに、いずれにしても、ダンブルドアがホグワーツ閉校へいこうという状況を一度も考えたことがないというのは、正しくありません。『秘ひ密みつの部へ屋や』が再び開かれたとき、ダンブルドアは学校閉鎖へいさを考えられました――それに、私わたくしにとっては、ダンブルドアが殺されたことのほうが、スリザリンの怪物が城の内奥ないおうに隠かくれ棲すんでいることよりも、穏おだやかならざることだと考えます……」
「理り事じたちと相談しなくてはなりませんな」
フリットウィック先生が小さなキーキー声で言った。額に大きな青痣あおあざができていたが、スネイプの部屋で倒れたときの傷は、それ以外にないようだった。
「定められた手続きに従わねばなりません。拙速せっそくに決定すべきことではありません」
「ハグリッド、何も言わないですね」マクゴナガル先生が言った。
「あなたはどう思いますか。ホグワーツは存続すべきですか?」