スキーターの伝記の前まえ宣せん伝でんによれば、ダンブルドアの完全かんぜん無欠むけつな人生を信じていた人たちには衝撃しょうげきが待ち受けていると、明らかにそう匂におわせている。スキーターの見つけた事実の中で、いちばん衝撃的なものは何かと聞いてみた。
「さあ、さあ、ベティ、そうは問屋とんやが卸おろさないざんす。まだ誰も本を買わないうちに、おいしいところを全部差し上げるわけにはいかないざんしょ」スキーターは笑った。「でもね、約束するざんすわ。ダンブルドア自身があのひげのように真っ白だと、まだそう思っている人には衝撃の発見ざんす これだけは言えるざんすがね、ダンブルドアが『例のあの人』に激怒げきどするのを聞いた人は夢にもそうは思わないざんしょうが、ダンブルドア自身、若いころは闇やみの魔術まじゅつにちょいと手を出していたざんす それに、後年こうねん寛容かんようを説とくことに生涯しょうがいを費やした魔法使いにしては、若いころは必ずしも心が広かったとは言えないざんすね ええ、アルバス・ダンブルドアは非常に薄暗うすぐらい過去を持っていたざんすとも。もちろん胡う散さん臭くさい家族のことは言うに及ばないざんす。ダンブルドアは躍起やっきになってそのことを葬ほうむろうとしたざんすがね」
スキーターが示し唆さしているのは、ダンブルドアの弟、アバーフォースのことかと聞いてみた。十五年前、魔法不正使用によりウィゼンガモットで有罪判決はんけつを受け、ちょっとしたスキャンダルの元になった人物だ。
「ああ、アバーフォースなんか、糞くそ山やまの一角いっかくざんすよ」スキーターは笑い飛ばした。「いやいや、山や羊ぎと戯たわむれるのがお好きな弟なんかよりはるかに悪質で、マグル傷しょう害がい事じ件けんの父親よりもさらに質たちが悪いざんす――いずれにせよ、二人ともウィゼンガモットに告発こくはつされたざんすから、ダンブルドアは、どちらの件も揉もみ消すことはできなかったざんすけどね。いいえ、実は、母親と妹のことざんすよ、あたくしが興味を引かれたのは。ちょっとほじくってみたら、ありましたざんすよ。胸の悪くなるような巣窟そうくつが――ま、先ほど言いましたざんすが、詳くわしくは九章から十二章までを読んでのお楽しみざんすね。いまはただ、自分の鼻がなぜ折れたかを、ダンブルドアが決して話さなかったのも無理はない、とだけ申し上げておくざんす」
家族の恥はじとなるような秘密は別として、スキーターは、多くの魔法を発見したダンブルドアの、卓越たくえつした能力をも否定するのだろうか
「頭はよかったざんすね」スキーターは認めた。「ただ、ダンブルドアの業績ぎょうせきとされているものすべてが、本当に彼一人の功績こうせきであったかどうかは、いまでは疑う人も多いざんすよ。第十六章であたくしが明らかにしてるざんすが、アイバー・ディロンスビーは、自分がすでに発見していたドラゴンの血液けつえきの八つの使用法を、ダンブルドアが論文に『借用しゃくよう』したと主張しているざんす」
しかし、筆者ひっしゃはあえて、ダンブルドアの功績のいくつかが重要なものであることは否定できないと主張した。グリンデルバルドを打ち負かしたという有名な一件はどうだろう
「ああ、それそれ、グリンデルバルドを持ち出してくださってうれしいざんす」スキーターは焦じらすように微笑ほほえんだ。「ダンブルドアの胸のすくような勝利に目を潤うるませる皆様には悪うござんすけど、心の準備じゅんびが必要ざんすね。これは爆弾ばくだんざんすよ――むしろクソ爆弾。まったく汚きたない話ざんす。ま、伝説でんせつの決闘けっとうと言えるものが本当にあったのかどうか、あまり思い込まないことざんすね。あたくしの本を読んだら、グリンデルバルドは単に杖つえの先から白いハンカチを出して神妙しんみょうに降参こうさんしただけ、なんていう結論を出さざるをえないかもしれないざんす」
スキーターはこの気になる話題について、これ以上は明かそうとしなかった。そこで、読者にとっては間違いなく興味をそそられるであろう人間関係に水を向けてみた。
「ええ、ええ」スキーターは勢いよくうなずいた。「一章まるまる割さいたざんすよ。ポッターダンブルドアの関係のすべてにはね。不ふ健けん全ぜんで、むしろ忌いまわしい関係だと言われてたざんす。まあ、この全容ぜんようも、新聞の読者にあたくしの本を買ってもらうしかないざんすがね、ダンブルドアがはじめっからポッターに不自然な関心を持っていたことは、間違いないざんす。それがあの少年にとって最さい善ぜんだったかどうか――ま、そのうちわかるざんしょ。とにかく、ポッターが問題のある青春時代を過ごしたことは、公然こうぜんの秘密ざんす」
スキーターは二年前、ハリー・ポッターとの、かの有名な独占どくせんインタビューを果たした。ポッターが確信を持って、「例のあの人」が戻ってきたと語った画期的記事だったが、いまでもポッターと接触せっしょくがあるかどうかと尋たずねてみた。