そのとき額ひたいの傷痕きずあとが焼けるように痛んだ。死喰い人がバイクの両側に一人ずつ現れ、同時に、背後から放はなたれた二本の「死しの呪のろい」は、ハリーをすれすれにかすめた――。
そして、ハリーは見た。ヴォルデモートが風に乗った煙のように、箒ほうきもセストラルもなしに飛んでくる。蛇へびのような顔が真っ暗な中で微光びこうを発し、白い指が再び杖を上げた――。
ハグリッドは恐怖の叫び声を上げ、バイクを一直線に下に向けた。ハリーは生きた心地もせずしがみつきながら、ぐるぐる回る夜空に向かって失神しっしん呪じゅ文もんを乱射らんしゃした。誰かが物体のようにそばを落ちていくのが見えたので、一人に命中したことはわかったが、そのときバーンという音が聞こえ、エンジンが火を噴ふくのが見えた。オートバイはまったく制せい御ぎょ不ふ能のうとなり、錐きりもみしながら落ちていった――。
またしても緑の閃光せんこうが、幾いく筋すじか二人をかすめて通り過ぎた。ハリーは上も下もわからなくなった。傷痕はまだ焼けるように痛んでいる。ハリーは死を覚悟かくごした。間近に箒に乗ったフード姿が迫せまり、その腕が上がるのが見えた――。
「この野郎」
怒りの叫び声を上げながら、ハグリッドがバイクから飛び降おりてその死喰い人に襲おそいかかった。ハリーが恐怖に目を見開くその前を、ハグリッドは死喰い人もろとも落ちていき、姿が見えなくなった。箒は二人の重みに耐たえられなかったのだ――。
やっとのことで両膝りょうひざに落下するバイクを押さえながら、ハリーはヴォルデモートの叫びを聞いた。
「俺おれ様さまのものだ」
もうおしまいだ。ヴォルデモートがどこにいるのか、姿も見えず、声も聞こえなくなった。死喰い人が一人、すっと道を開けるのがちらりと見えたとたん、声が聞こえた。
「アバダ――」
傷痕の激痛げきつうで、ハリーは目を固く閉じた。そのとき、ハリーの杖がひとりでに動いた。まるで巨大な磁石じしゃくのように、杖がハリーの手を引っ張っていくのを感じた。閉じた瞼まぶたの間から、ハリーは金色こんじきの炎が杖から噴き出すのを見、バシンという音とともに、怒りの叫びを聞いた。一人残っていた死喰い人が大声を上げ、ヴォルデモートは「しまった」と叫んだ。なぜか、ハリーの目と鼻の先にドラゴン噴射ふんしゃのボタンが見えた。杖に引かれていないほうの手を握にぎって拳こぶしでボタンを叩たたくと、バイクはまたしても炎を吹き出して、一直線に地上に向かった。
「ハグリッド」ハリーは必死でバイクにつかまりながら呼んだ。
「ハグリッド――アクシオ ハグリッド」
バイクは地面に吸い込まれるようにスピードを上げた。ハリーの顔はハンドルと同じ高さにあり、遠くの明かりがどんどん近づいてくるのだけが見えた。このままでは衝突しょうとつする。しかしどうしようもない。背後でまた叫さけぶ声がした――。
「おまえの杖つえだ。セルウィン、おまえの杖をよこせ」
ヴォルデモートの姿が見える前に、ハリーはその存在を感じた。横を見ると、赤い両眼りょうがんと目が合った。きっとこれがこの世の見納みおさめだ。ヴォルデモートは再びハリーに死しの呪のろいをかけようとしている――。
ところがそのとき、ヴォルデモートの姿が消えた。下を見ると、ハグリッドが真下の地面に大の字に伸びていた。ハグリッドの上に落ちないようにと、ハリーは必死にハンドルをぐいと引き、ブレーキをまさぐったが、耳を劈つんざき地面を揺ゆるがす衝突音とともに、ハリーは池の泥水どろみずの中に突っ込んだ。
突然,哈利额头上的伤疤火烧火燎地痛了起来。摩托车两 边各出现了一个食死徒,两个杀戮咒从后面射来,只差一毫米 就击中了哈利——
接着,哈利看见了他。伏地魔像烟一样乘风飞翔,没有扫 帚,也没有夜骐,那张蛇脸在黑暗中闪着亮光,苍白的手指又 举起了魔杖——
海格惊恐地大吼一声,驾驶摩托车垂直降落。哈利一边拼 命稳住身子,一边对着旋转的黑夜胡乱发射昏迷咒。他看见一 个身体从旁边飞过,知道自己击中了一个,可是接着听见一声 巨响,看见马达迸出火花。摩托车在空中打着旋儿,完全失控 ——
又是一道道绿光射过。哈利已经分辨不出上下左右。伤疤 仍然火辣辣地疼。他以为自己随时都会死去。一个戴兜帽的身 影骑在扫帚上,离他只有几步远,哈利看见他举起了手臂——
“不!”
海格怒吼一声,纵身跳出摩托车,朝那个食死徒扑去。哈 利惊恐地看见海格和食死徒都坠落下去,不见了踪影,飞天扫 帚吃不住他们两个加起来的重量——
哈利用膝盖勉强钩住急速下降的摩托车,只听伏地魔叫道 :“我的!”
完了!他看不见也听不到伏地魔在哪里。他只瞥见另一个 食死徒突然闪到一边,然后听见:“阿瓦达——”
伤疤的剧痛逼得哈利闭上眼睛,他的魔杖自己采取了行动 。哈利感觉魔杖像有某种巨大的磁力般把他的手拽向一边,他 半闭着的眼睛看见一道金色的火焰喷射出来,接着听见一声爆 响和一声愤怒的尖叫。剩下的那个食死徒在大嚷,伏地魔在尖 叫:“不!”不知怎么一来,哈利发现自己的鼻子离那个龙火 按钮只有一寸。他用没拿魔杖的那只手使劲一砸按钮,摩托车 又朝空中喷射出火焰,同时径直朝地面坠落下去。
“海格!”哈利死死抓住摩托车,大声喊道,“海格—— 海格飞来!”
摩托车在加速,似乎是被吸引着坠向地面。哈利的脸与把 手平行,只能看见远处的灯光越来越近。他肯定要摔死了,可 他除了坐以待毙之外没有别的办法。身后又传来一声喊叫:“ 你的魔杖,塞尔温,把你的魔杖给我!”
他还没有看见伏地魔就已经感觉到了他。哈利往旁边一看 ,正撞上那双红红的眼睛,它们肯定是他这辈子看到的最后一 样东西了:伏地魔正准备再次对他念咒——
随即,伏地魔消失了。哈利低头一看,海格四仰八叉地躺 在下面的地上。哈利使劲拉动把手以免撞到海格,然后摸索着 去踩刹车,可是随着一声震耳欲聋、惊天动地的巨响,他一头 栽进了一个泥潭。