「帰ってきたわ」ハーマイオニーが喜びの声を上げた。
トンクスが長々と箒ほうき跡あとを引きずり、土や小石をあたり一面に跳はね飛ばしながら着地した。
「リーマス」よろよろと箒から下りたトンクスが、叫さけびながらルーピンの腕に抱かれた。
ルーピンは何も言えず、真っ青な硬かたい表情をしていた。ロンはぼーっとして、よろけながらハリーとハーマイオニーのほうに歩いてきた。
「君たち、無事だね」ロンがつぶやいた。
ハーマイオニーは飛びついてロンをしっかりと抱きしめた。
「心配したわ――私、心配したわ――」
「僕、大丈夫」ロンは、ハーマイオニーの背中を叩たたきながら言った。「僕、元気」
「ロンはすごかったわ」トンクスが、抱きついていたルーピンから離はなれて、ロンを誉ほめそやした。「すばらしかった。死し喰くい人びとの頭に『失神しっしん呪じゅ文もん』を命中させたんだから。なにしろ飛んでいる箒から動く的まとを狙ねらうとなると――」
「ほんと」
ハーマイオニーはロンの首に両腕を巻きつけたまま、ロンの顔をじっと見上げた。
「意外で悪かったね」
ロンはハーマイオニーから離れながら、少しむっとしたように言った。
「僕たちが最後かい」
「違うわ」ジニーが言った。「ビルとフラー、それにマッド‐アイとマンダンガスがまだなの。ロン、私、パパとママに、あなたが無事だって知らせてくるわ――」
ジニーが家に駆かけ込んだ。
「それで、どうして遅くなった 何があったんだ」
ルーピンは、まるでトンクスに腹を立てているような聞き方をした。
「ベラトリックスなのよ」トンクスが言った。「あいつ、ハリーを狙ねらうのと同じくらいしつこく私を狙ってね、リーマス、私を殺そうと躍起やっきになってた。あいつをやっつけたかったなぁ。ベラトリックスには借りがあるんだから。でも、ロドルファスには確実に傷を負わせてやった……それからロンのおばさんのミュリエルの家に行ったけど、移動ポートキーの時間に間に合わなくて、ミュリエルにさんざんやきもきされて――」
ルーピンは、顎あごの筋肉をピクピクさせて聞いていた。うなずくだけで、何も言えないようだった。
「それで、みんなのほうは何があったの」
トンクスがハリー、ハーマイオニー、そしてキングズリーに聞いた。
それぞれがその夜の旅のことを語った。しかし、その間も、ビル、フラー、マッド‐アイ、マンダンガスの姿がないことが、霜しもが降おりたように全員の心にのしかかり、その冷たさは次第に無視できない辛つらさになっていた。
「私はダウニング街の首しゅ相しょう官かん邸ていに戻らなければならない。一時間前に戻っていなければならなかったのだが――」しばらくしてキングズリーがそう言い、最後にもう一度、隅々すみずみまで空を見回した。「戻ってきたら、報しらせをくれ」
ルーピンがうなずいた。みんなに手を振ふりながら、キングズリーは暗闇くらやみの中を門へと歩いていった。ハリーは、「隠かくれ穴あな」の境界のすぐ外で、キングズリーが「姿すがたくらまし」をするポンという微かすかな音を聞いたような気がした。