「ねえ、どうして勉強をやめてしまうのかしら」おばさんが言った。
「あの、ダンブルドアが僕に……やるべきことを残して」ハリーは口ごもった。「ロンとハーマイオニーはそのことを知っています。それで二人とも一緒いっしょに来たいって」
「『やるべきこと』ってどんなことなの」
「ごめんなさい。僕、言えない――」
「あのね、率直そっちょくに言って、アーサーと私は知る権利があると思うの。それに、グレンジャーご夫妻もそうおっしゃるはずよ」ウィーズリーおばさんが言った。「子を心配する親心」の攻こう撃げき作さく戦せんを、ハリーは前から恐れていた。ハリーは気合を入れて、おばさんの目をまっすぐに見た。そのせいで、おばさんの褐色かっしょくの目が、ジニーの目とまったく同じ色合いであることに気づいてしまった。これには弱かった。
「おばさん、ほかの誰にも知られないようにというのが、ダンブルドアの願いでした。すみません。ロンもハーマイオニーも、一緒に来る必要はないんです。二人が選ぶことです――」
「あなただって、行く必要はないわ」いまや遠回しをかなぐり捨てたおばさんが、ぴしゃりと言った。「あなたたち、ようやく成人に達したばかりなのよ まったくナンセンスだわ。ダンブルドアが何か仕事をさせる必要があったのなら、騎き士し団だん全員が指し揮き下かにいたじゃありませんか ハリー、あなた、誤解ごかいしたに違いないわ。ダンブルドアは、たぶん、誰かにやり遂とげてほしいことがあると言っただけなのに、あなたは自分に言われたと考えて――」
「誤解なんかしていません」ハリーはきっぱりと言った。「僕でなければならないことなんです」ハリーは自分のものかどうかを見分けるはずの靴下くつしたの片方を、おばさんに返した。金色のパピルスの模様もようがついている。「それに、これは僕のじゃないです。僕、パドルミア・ユナイテッドのサポーターじゃありません」
「あら、そうだったわね」ウィーズリーおばさんは急に何気ない口調に戻ったが、かなり気になる戻り方だった。「私が気づくべきだったのにね。じゃあ、ハリー、あなたがまだここにいる間に、ビルとフラーの結婚式の準備じゅんびを手伝ってもらってもかまわないかしら まだまだやることがたくさん残っているの」
「いえ――あの――もちろんかまいません」
急に話題が変わったことに、かなり引っかかりを感じながら、ハリーが答えた。
「助たすかるわ」おばさんはそう言い、洗い場から出ていきながら微笑ほほえんだ。