「アハリー、あなたをどんなふうに変装へんそうさせるか、きめないといけませーんね」
デザートが行き渡ったところでフラーが言った。ハリーがきょとんとしていると、フラーが、「結婚式のためでーすね」とつけ加えた。
「もちろん、招しょう待たい客きゃくに死し喰くい人びとはいませーん。でも、シャンパーニュを飲んだあと、秘密いみつのことを漏もらさなーいという保証ほしょうはありませーんね」
その言い方で、ハリーは、フラーがまだハグリッドを疑っていると思った。
「そうね、そのとおりだわ」
テーブルのいちばん奥に座っていたウィーズリーおばさんが、鼻メガネを掛かけて、異常に長い羊よう皮ひ紙しに書きつけた膨大ぼうだいな仕事のリストを調べながら言った。
「さあ、ロン、部屋のお掃除そうじはすんだの」
「どうして」ロンはスプーンをテーブルに叩たたきつけ、母親をにらみながら叫さけんだ。「どうして自分の部屋まで掃除しなきゃならないんだ ハリーも僕もいまのままでいいのに」
「まもなくお兄さんがここで結婚式を挙あげるんですよ、坊ぼっちゃん――」
「僕の部屋で挙げるっていうのか」ロンがかんかんになって聞いた。「違うさ なら、なんでまた、おたんこなすのすっとこどっこいの――」
「母親に向かってそんな口をきくものじゃない」ウィーズリーおじさんがきっぱりと言った。「言われたとおりにしなさい」
ロンは父親と母親をにらみつけ、それからスプーンを拾い上げて、少しだけ残っていたアップルパイに食ってかかった。
「手伝うよ。僕が散らかした物もあるし」
ハリーはロンにそう言ったが、おばさんがハリーの言葉を遮さえぎった。
「いいえ、ハリー、あなたはむしろ、アーサーの手伝いをしてくださると助かるわ。鶏にわとりの糞ふんを掃除してね。それからハーマイオニー、デラクールご夫妻のためにシーツを取り代えておいてくださるとありがたいんだけど。ほら、明日の午前十一時に到着なさる予定なのよ」
結局、鶏のほうは、ほとんどすることがなかった。
「何と言うか、その、モリーには言う必要はないんだが」おじさんはハリーが鶏とり小ご屋やに近づくのを遮りながら言った。「しかし、その、テッド・トンクスがシリウスのバイクの残ざん骸がいをほとんど送ってくれてね、それで、なんだ、ここに隠して――いやその、保管して――あるわけだ。すばらしいものだよ。排気はいきガス抜きとか――たしかそんな名前だったと思うが――壮大なバッテリーとかだがね。それにブレーキがどう作動するかがわかるすばらしい機会だ。もう一度組み立ててみるつもりだよ。モリーが見ていない――いや、つまり、時間があるときにね」