「分霊箱の在あり処かが一つでもわかっているなら、君に賛成するけど」ハリーが言った。
ハリーには、ゴドリックの谷に帰りたいという自分の願いを、ハーマイオニーが本当に理解しているとは思えなかった。両親の墓があるというのは、そこに惹ひかれる理由の一つにすぎない。ハリーには、あの場所が答えを出してくれるという、強い、しかし説明のつかない気持があるのだ。もしかしたら、ヴォルデモートの死の呪のろいから生き残ったのがその場所だったという、単にそれだけの理由かもしれない。もう一度生き残れるかどうかの挑戦に立ち向かおうとしているいま、ハリーは最初にその出来事が起こった場所に惹かれ、理解したいと考えているのかもしれない。
「ヴォルデモートが、ゴドリックの谷を見張っている可能性があるとは思わない」ハーマイオニーが聞いた。「あなたがどこへでも自由に行けるようになったら、両親のお墓参りに、そこに戻ると読んでいるんじゃないかしら」
ハリーはこれまで、そんなことを思いつきもしなかった。反論はないかとあれこれ考えているうちに、どうやら別のことを考えていたらしいロンが発言した。
「あの・・って人。ほら、本物のロケットを盗んだ人だけど」
ハーマイオニーがうなずいた。
「メモに、自分が破壊はかいするつもりだって書いてあった。そうだろ」
ハリーはリュックサックを引き寄せて、偽にせの分霊箱を取り出した。中に・・のメモが、折りたたんで入ったままになっている。
「本当の分霊箱は私が盗みました。できるだけ早く破壊するつもりです」
ハリーが読み上げた。
「うん、それで、彼がほんとにやっつけてたとしたら」ロンが言った。
「彼女かもね」ハーマイオニーが口を挟はさんだ。
「どっちでもさ」ロンが言った。「そしたら、僕たちのやることが一つ少なくなる」
「そうね。でも、いずれにしても本物のロケットの行方ゆくえは追わなくちゃならないわ。そうでしょう」ハーマイオニーが言った。「ちゃんと破壊はかいされているかどうかを、確かめるのよ」
「それで、分霊ぶんれい箱ばこを手に入れたら、いったいどうやって破壊するのかなぁ」ロンが聞いた。
「あのね」ハーマイオニーが答えた。「私、そのことをずっと調べていたの」
「どうやるの」ハリーが聞いた。「図書室には分霊箱に関する本なんてない、と思ってたけど」
「なかったわ」ハーマイオニーが頬ほおを赤らめた。「ダンブルドアが全部取り除いたの――でも処分しょぶんしたわけじゃなかったわ」
ロンは、目を丸くして座り直した。