マイナス面は、「隠かくれ穴あな」がこれほど大おお所じょ帯たい用ようには作られていなかったことだ。ウィーズリー夫妻は、抗議こうぎするデラクール夫妻を寄り切り、自分たちの寝室しんしつを提供して居間で寝ることになった。ガブリエールはパーシーが使っていた部屋でフラーと一緒いっしょに、ビルは、花はな婿むこ付つき添そい人のチャーリーがルーマニアから到着すれば、同じ部屋になる予定だった。三人で計画を練るチャンスは、事実上なくなった。やりきれない思いから、ハリー、ロン、ハーマイオニーは、混雑した家から逃れるだけのためにでも、鶏にわとりに餌えさをやる仕事を買って出た。
「どっこい、ママったら、まだ僕たちのこと、ほっとかないつもりだぜ」
ロンが歯は噛がみした。三人が庭で話し合おうとしたのはこれで二度目だったが、両腕に大きな洗せん濯たく物ものの籠かごを抱えたおばさんの登場で、またしても挫折ざせつしてしまった。
「あら、もう鶏に餌をやってくれたのね。よかった」おばさんは近づきながら声をかけた。「また鶏とり小ご屋やに入れておいたほうがいいわ。明日、作業の人たちが到着する前に……結婚式用のテントを張りにくるのよ」おばさんは鶏小屋に寄り掛かかって、ひと休みしながら説明した。疲れているようだった。「ミラマンのマジック幕まく……とってもいいテントよ。ビルが作業の人手を連れてくるの……ハリー、その人たちがいる間は、家の中に入っていたほうがいいわね。家の周りにこれほど安全あんぜん呪文じゅもんが張はり巡めぐらされていると、結婚式の準備がどうしても複雑ふくざつになるわね」
「すみません」ハリーは申しわけなさそうに言った。
「あら、謝あやまるなんて、そんな」ウィーズリーおばさんが即座そくざに言った。「そんなつもりで言ったんじゃないのよ――あのね、あなたの安全のほうがもっと大事なの 実はね、ハリー、あなたに聞こう聞こうと思っていたんだけど、お誕たん生じょう日びはどんなふうにお祝いしてほしい 十七歳は、何と言っても、大切な日ですものね……」
「面倒なことはしないでください」この上みんなにストレスがかかることを恐れて、ハリーが急いで言った。「ウィーズリーおばさん、ほんとに、普通の夕食でいいんです……結婚式の前の日だし……」
「まあ、そう。あなたがそう言うならね。リーマスとトンクスを招待しょうたいしようと思うけど、いい ハグリッドは」
「そうしていただけたら、うれしいです」ハリーが言った。「でも、どうぞ、面倒なことはしないでください」
「大丈夫、大丈夫よ……面倒なんかじゃありませんよ……」
おばさんは探るような目でしばらくハリーをじっと見つめ、やがて少し悲しげに微笑ほほえむと、背筋せすじを伸ばして歩いていった。おばさんが物干ものほしロープのそばで杖つえを振ふると、洗せん濯たく物ものがひとりでに宙ちゅうに飛び上がってロープにぶら下がった。その様子を眺ながめながら、ハリーは突然、おばさんに迷惑めいわくをかけ、しかも苦しませていることに、深い自責じせきの念ねんが湧わき起こるのを感じた。