「たぶん」ハリーは考えながら言った。「その人はクィディッチに関係がある。何かつながりがあるんだ。でもどうしても――それが何なのかわからない」
「クィディッチ」ロンが聞き返した。「ゴルゴビッチのことを考えてるんじゃないのか」
「誰」
「ドラゴミール・ゴルゴビッチ。チェイサーだ。二年前に記録的な移い籍せき金きんでチャドリー・キャノンズに移った。一シーズンでのクアッフル・ファンブルの最さい多た記録きろく保ほ持じ者しゃさ」
「違う」ハリーが言った。「僕が考えているのは、絶対にゴルゴビッチじゃない」
「僕もなるべく考えないようにしてるけどな」ロンが言った。「まあ、とにかく、誕たん生じょう日びおめでとう」
「うわぁ――そうだ。忘れてた 僕、十七歳だ」
ハリーはキャンプベッドの脇わきに置いてあった杖つえをつかみ、散らかった机に向けた。そこにメガネが置いてある。
「アクシオ メガネよ、来い」
たった三十センチしか離はなれていなかったが、メガネがブーンと飛んでくるのを見ると、何だかとても満足だった。もっとも、メガネが目を突つきそうになるまでの束つかの間まの満足だったが。
「お見事」ロンが鼻先で笑った。
「臭におい」が消えたことに有頂うちょう天てんになって、ハリーはロンの持ち物を部屋中に飛び回らせた。ピッグウィジョンが目を覚まし、興こう奮ふんして籠かごの中をパタパタと飛び回った。ハリーはスニーカーの靴くつ紐ひもも魔法で結んでみたしあとで結び目を手でほどくのに数分かかった、おもしろ半分に、ロンのチャドリー・キャノンズのポスターの、ユニフォームのオレンジ色を鮮あざやかなブルーに変えてみた。
「僕なら、社会の窓を手で閉めるけどな」
ロンの忠告ちゅうこくで、ハリーはあわててチャックを確かめた。ロンがにやにや笑った。
「ほら、プレゼント。ここで開けろよ。ママには見られたくないからな」
「本か」長方形の包みを受け取ったハリーが言った。「伝でん統とうを破やぶってくれるじゃないか」
「普通の本ではないのだ」ロンが言った。「こいつはお宝ものだぜ。『確実かくじつに魔女を惹ひきつける十二の法則ほうそく』。女の子について知るべきことが、すべて説明してある。去年これを持ってたら、ラベンダーを振ふり切るやり方がばっちりわかったのになぁ。それに、どうやったらうまく……まあ、いい。フレッドとジョージに一冊もらったんだ。ずいぶんいろいろ学んだぜ。君も目から鱗うろこだと思うけど、何も杖先つえさきの技だけってわけじゃないんだよ」