「ロナルド、君はダンブルドアと親しかったと言えるかね」スクリムジョールは、ハーマイオニーを無視して質問した。ロンはびっくりしたような顔をした。
「僕 いや――そんなには……それを言うなら、ハリーがいつでも……」
ロンは、ハリーとハーマイオニーの顔を見た。するとハーマイオニーが、「いますぐ黙だまれ」という目つきでロンを見ていた。しかし、遅かった。スクリムジョールは、思うつぼの答えを得たという顔をしていた。そして、獲物えものを狙ねらう猛もう禽きん類るいのように、ロンの答えに襲おそいかかった。
「君が、ダンブルドアとそれほど親しくなかったのなら、遺言で君に遺品いひんを残したという事実をどう説明するかね 個人的な遺い贈ぞう品ひんは非常に少なく、例外的だった。ほとんどの持ち物は――個人の蔵ぞう書しょ、魔法の計器類、そのほかの私物などだが――ホグワーツ校に遺のこされた。なぜ、君が選ばれたと思うかね」
「僕……わからない」ロンが言った。「僕……そんなには親しくなかったと僕が言ったのは……つまり、ダンブルドアは、僕のことを好きだったと思う……」
「ロン、奥ゆかしいのね」ハーマイオニーが言った。「ダンブルドアはあなたのことを、とてもかわいがっていたわ」
これは、真実と言えるぎりぎりの線だった。ハリーの知るかぎり、ロンとダンブルドアは、一度も二人きりになったことはないし、直接の接触せっしょくもなきに等しかった。しかし、スクリムジョールは聞かなかったかのように振舞ふるまった。マントの内側に手を入れ、ハリーがハグリッドからもらったものよりずっと大きい巾きん着ちゃく袋ぶくろを取り出した。その中から羊よう皮ひ紙しの巻物を取り出し、大臣は広げて読み上げた。
「『アルバス・パーシバル・ウルフリック・ブライアン・ダンブルドアの遺ゆい言ごん書しょ』……そう、ここだ……『ロナルド・ビリウス・ウィーズリーに、〝灯ひ消けしライター〟を遺贈いぞうする。使うたびに、わしを想おもい出してほしい』」
スクリムジョールは、巾着からハリーに見覚えのある物を取り出した。銀のライターのように見えるものだが、カチッと押すたびに、周囲の灯あかりを全部吸い取り、また元に戻す力を持っている。スクリムジョールは、前まえ屈かがみになって「灯消しライター」をロンに渡した。受け取ったロンは、唖然あぜんとした顔でそれを手の中でひっくり返した。
「それは価値のある品だ」スクリムジョールがロンをじっと見ながら言った。「たった一つしかない物かもしれない。間違いなくダンブルドア自身が設計したものだ。それほどめずらしい物を、なぜ彼は君に遺のこしたのかな」
ロンは困こん惑わくしたように、頭を振ふった。