スクリムジョールは、胡桃くるみ大の小さな金こん色じきのボールを取り出した。銀の羽がかなり弱々しく羽ばたいている。ハリーは、高こう揚ようしていた気持ががっくり落ち込むのをどうしようもなかった。
「ダンブルドアは、なぜ君にスニッチを遺のこしたのかね」スクリムジョールが聞いた。
「さっぱりわかりません」ハリーが言った。「いま、あなたが読み上げたとおりの理由だと思います……僕に思い出させるために……忍耐と何とかが報いられることを」
「それでは、単に象しょう徴ちょう的てきな記念品だと思うのかね」
「そうだと思います」ハリーが答えた。「ほかに何かありますか」
「質問しているのは、私だ」
スクリムジョールは、肘ひじ掛かけ椅い子すを少しソファのほうに引きながら言った。外は本格的に暗くなってきた。窓から見えるテントが、垣根かきねの上にゴーストのような白さでそびえ立っている。
「君のバースデーケーキも、スニッチの形だった」スクリムジョールがハリーに向かって言った。「なぜかね」
ハーマイオニーが、嘲あざけるような笑い方をした。
「あら、ハリーが偉大いだいなシーカーだからというのでは、あまりにも当たり前すぎますから、そんなはずはないですね」ハーマイオニーが言った。「ケーキの砂さ糖とう衣ごろもに、ダンブルドアからの秘密の伝言が隠されているに違いない とか」
「そこに、何かが隠されているとは考えていない」スクリムジョールが言った。「しかしスニッチは、小さなものを隠すには格好かっこうの場所だ。君は、もちろんそのわけを知っているだろうね」
ハリーは肩をすくめたが、ハーマイオニーが答えた。身に染しみついた習慣で、ハーマイオニーは、質問に正しく答えるという衝動しょうどうを抑えることができないのだろう、とハリーは思った。
「スニッチは肉の記憶きおくを持っているからです」ハーマイオニーが言った。
「えっ」
ハリーとロンが同時に声を上げた。二人とも、クィディッチに関するハーマイオニーの知識は、なきに等しいと思っていたのだ。
「正解だ」スクリムジョールが言った。「スニッチというものは、空に放はなたれるまで素手で触ふれられることがない。作り手でさえも手袋をはめている。最初に触れる者が誰か、を認にん識しきできるように呪じゅ文もんがかけられている。判はん定てい争いになったときのためだ。このスニッチは――」
スクリムジョールは、小さな金こん色じきのボールを掲かかげた。
「君の感触かんしょくを記憶きおくしている。ポッター、ダンブルドアはいろいろ欠けっ陥かんがあったにせよ、並なみ外はずれた魔法力を持っていた。そこで思いついたのだが、ダンブルドアはこのスニッチに魔法をかけ、君だけのために開くようにしたのではないかな」
ハリーの心臓が激はげしく打ちはじめた。スクリムジョールの言うとおりだと思った。大臣の前で、どうやったら素手でスニッチに触れずに受け取れるだろう