「なに驚いてるんだよ 子どもの昔話はみんなビードルの物語のはずだろ 『たくさんの宝たからの泉いずみ』……『魔法使いとポンポン飛ぶポット』……『ぺちゃくちゃウサちゃんとぺちゃくちゃ切きり株かぶ』……」
「何ですって」ハーマイオニーがクスクス笑った。「最後のは何ですって」
「いい加減かげんにしろよ」ロンは信じられないという顔で、ハリーとハーマイオニーを見た。「聞いたことあるはずだぞ、ぺちゃくちゃウサちゃんのこと――」
「ロン、ハリーも私もマグルに育てられたってこと、よく知ってるじゃない」ハーマイオニーが言った。「私たちが小さいときは、そういうお話は聞かなかったわ。聞かされたのは『白しら雪ゆき姫ひめと七人の小人こびと』だとか『シンデレラ』とか――」
「何だ、そりゃ 病気の名前か」ロンが聞いた。
「それじゃ、これは童話どうわなのね」ハーマイオニーがもう一度本を覗のぞき込み、ルーン文字を見ながら聞いた。
「ああ」ロンは自信なさそうに答えた。「つまり、そう聞かされてきたのさ。そういう昔話は、全部ビードルから来てるって。元々の話がどんなものだったのかは、僕、知らない」
「でも、ダンブルドアは、どうして私にそういう話を読ませたかったのかしら」
下の階で何かが軋きしむ音がした。
「たぶんチャーリーだ。ママが寝ちゃったから、髪かみの毛を伸ばしにこっそり出ていくとこだろ」ロンがおどおどしながら言った。
「いずれにしても、私たちも寝なくちゃ」ハーマイオニーが囁ささやいた。「明日は寝坊ねぼうしたら困るでしょ」
「まったくだ」ロンが相あい槌づちを打った。「『花はな婿むこの母親による、残ざん忍にんな三人連続殺人』となりゃぁ、結婚式にちょいとケチがつくかもしれないしな。僕が灯あかりを消すよ」
ハーマイオニーが部屋を出ていくのを待って、ロンは「灯ひ消けしライター」をもう一度カチッと鳴らした。