「いいぞ、ヴィーラのいとこが何人かいるな」ジョージがよく見ようと首を伸ばしながら言った。「あいつら、イギリスの習慣を理解するのに助けがいるな。俺に任まかせろ……」
「焦あせるな、耳無し」言うが早いか、フレッドは、行列の先頭でガーガーしゃべっている中年の魔女たちを素早く飛ばして、かわいいフランスの女性二人に、いい加減かげんなフランス語で話しかけた。「さあ――ペルメテ・モアよろしければ あなたたちをアてシつスだテいします」
二人はクスクス笑いながら、フレッドにエスコートさせて中に入った。ジョージには中年魔女たちが残された。ロンは魔ま法ほう省しょうの父親の同僚どうりょう、年老いたパーキンズの係になり、ハリーの担当は、かなり耳の遠い年寄り夫婦だった。
「よっ」
ハリーがテントの入口に戻ってくると、聞き覚えのある声がして、列のいちばん前にトンクスとルーピンがいた。トンクスの髪かみは、この日のためにブロンドになっていた。
「アーサーが、髪がくるくるの男の子が君だって教えてくれたんだよ。昨夜さくやはごめん」二人を案内するハリーに、トンクスが小声で謝あやまった。「魔ま法ほう省しょうはいま、相当反はん人じん狼ろう的てきになっているから、私たちがいると君のためによくない、と思ったの」
「気にしないで。わかっているから」ハリーはトンクスよりも、むしろルーピンに対して話しかけた。ルーピンはハリーにさっと笑顔を見せたが、互いに視線を外はずしたときにルーピンの顔がまた翳かげり、顔のしわに惨みじめさが刻きざまれるのを、ハリーは気づいた。ハリーにはそれが理解できなかったが、しかしそのことを考えている暇ひまはなかった。ハグリッドがちょっとした騒ぎを引き起こしていたからだ。フレッドの案内を誤解ごかいしたハグリッドは、後方に魔法で用意されていた特別の強化拡かく大だい椅い子すに座らずに、普通の椅子を五席まとめて腰掛こしかけたため、いまやそのあたりは金色のマッチ棒ぼうが積み重なったような有あり様さまになっていた。
ウィーズリーおじさんが被害ひがいを修復しゅうふくし、ハグリッドが誰かれなく片かたっ端ぱしから謝あやまっている間、ハリーは急いで入口に戻った。そこにはロンが、飛びきり珍妙ちんみょうな姿の魔法使いと向き合って立っていた。片目がやや斜視で、綿わた菓が子しのような白はく髪はつを肩まで伸ばし、帽子ぼうしの房ふさを鼻の前に垂れ下がらせている。着ているローブは、卵の黄身のような目がチカチカする黄色だ。首にかけた金鎖きんぐさりのペンダントには、三角の目玉のような奇妙きみょうな印が光っている。
「ゼノフィリウス・ラブグッドです」男はハリーに手を差し出した。「娘と二人であの丘の向こうに住んでいます。ウィーズリーご夫妻が、ご親切にも私たちを招いてくださいました。君は、娘のルーナを知っていますね」ゼノフィリウスがロンに聞いた。
「ええ」ロンが答えた。「ご一いっ緒しょじゃないんですか」
「あの子はしばらく、お宅たくのチャーミングな庭で遊んでいますよ。庭にわ小こ人びとに挨あい拶さつをしてましてね。すばらしい蔓まん延えんぶりです あの賢かしこい庭小人たちからどんなにいろいろ学べるかを、認にん識しきしている魔法使いがいかに少ないことか――学名で呼ぶならゲルヌンブリ・ガーデンシですがね」
「家うちの庭小人は、たしかにすばらしい悪あく態たいのつき方をたくさん知ってます」ロンが言った。「だけど、フレッドとジョージがあいつらに教えたんだと思うけど」