「……それにお前の髪は長すぎるぇ、ロナルド。わたしゃ、一瞬いっしゅんお前を妹のジネブラと見間違えたぇ。なんとまあ、ゼノフィリウス・ラブグッドの着てる物は何だぇ まるでオムレツみたいじゃないか。それで、あんたは誰かぇ」魔女がハリーに吠ほえ立たてた。
「ああ、そうだ、ミュリエルおばさん、いとこのバーニーだよ」
「またウィーズリーかね お前たちゃ庭にわ小こ人びと算ざんで増えるじゃないか。ハリー・ポッターはここにいるのかぇ 会えるかと思ったに。お前の友達かと思ったが、ロナルド、自慢じまんしてただけかぇ」
「違うよ――あいつは来られなかったんだ――」
「ふむむ。口実を作ったというわけかぇ それなら新聞の写真で見るほど愚おろかしい子でもなさそうだ。わたしゃね、花嫁にわたしのティアラの最高の被かぶり方を教えてきたところだよ」魔女は、ハリーに向かって大声で言った。「ゴブリン製だよ、なにせ。そしてわが家に何百年も伝わってきたんだぇ。花嫁はきれいな子だ。しかしどうひねくっても――フランス人だぞぇ。やれやれ、ロナルド、よい席を見つけておくれ。わたしゃ百七歳だぇ。あんまり長いこと立っとるわけにはいかないぞぇ」
ロンは、ハリーに意味ありげな目配せをして通り過ぎ、しばらくの間、出てこなかった。次に入口でロンを見つけたときは、ハリーは十二人もの客を案内して出てきたところだった。テントはいまやほとんど満席になっていて、入口にはもう誰も並んでいなかった。
「悪夢だぜ、ミュリエルは――」ロンが額ひたいの汗を袖そでで拭ぬぐいながら言った。「以前は毎年クリスマスに来てたんだけど、ありがたいことに、フレッドとジョージが祝宴しゅくえんのときにおばさんの椅い子すの下でクソ爆ばく弾だんを破裂はれつさせたのに腹を立ててさ。親父おやじは、おばさんの遺ゆい言ごん書しょから二人の名前が消されてしまうだろうって言うけど――あいつら気にするもんか。最後はあの二人が、親しん戚せきの誰よりも金持ちになるぜ。そうなると思う……うわおぉっ」
ハーマイオニーが急いで二人のほうにやってくるのを見て、ロンは目をパチパチさせながら言った。
「すっごくきれいだ」
「意外で悪かったわね」そう言いながらも、ハーマイオニーはにっこりした。
ハーマイオニーはライラック色のふわっとした薄うす布ぬののドレスに、同じ色のハイヒールを履はいていた。髪かみはまっすぐで艶つややかだ。
「あなたのミュリエル大おばさんは、そう思っていらっしゃらないみたい。ついさっき二階で、フラーにティアラを渡していらっしゃるところをお目にかかったわ。そしたら、『おや、まあ、これがマグル生まれの子かぇ』ですって。それからね、『姿勢が悪い。足首がガリガリだぞぇ』」
「君への個人攻こう撃げきだと思うなよ。おばさんは誰にでも無礼なんだから」ロンが言った。
「ミュリエルのことか」フレッドと一緒いっしょにテントから現れたジョージが聞いた。「まったくだ。たったいま、俺おれの耳が一方に偏かたよってるって言いやがった。あの老おいぼれコウモリめ。だけど、ビリウスおじさんがまだ生きてたらよかったのになぁ。結婚式には打ってつけのおもしろい人だったのに」
「その人、死しに神がみ犬けんのグリムを見て、二十四時間後に死んだ人じゃなかった」
ハーマイオニーが聞いた。
「ああ、うん。最後は少しおかしくなってたな」ジョージが認めた。
「だけど、いかれっちまう前は、パーティを盛もり上げる花形だった」フレッドが言った。「ファイア・ウィスキーを一本まるまる飲んで、それからダンスフロアに駆かけ上がり、ローブをまくり上げて花はな束たばをいくつも取り出すんだ。どっからって、ほら――」
「ええ、ええ、さぞかしパーティの花だったでしょうよ」
ハリーは大笑いしたが、ハーマイオニーはつんと言い放はなった。
「一度も結婚しなかったな。なぜだか」ロンが言った。
「それは不思議ね」ハーマイオニーが言った。