あまり笑いすぎて、遅れて到着した客がロンに招しょう待たい状じょうを差し出すまで、誰も気がつかなかった。黒い髪かみに大きな曲がった鼻、眉まゆの濃い青年だ。青年はハーマイオニーを見ながら言った。
「君はすヴァらしい」
「ビクトール」
ハーマイオニーが金切かなきり声ごえを上げて、小さなビーズのバッグを落とした。バッグは、小さいくせに不ふ釣つり合あいに大きな音を立てた。ハーマイオニーは頬ほおを染そめ、あわててバッグを拾ひろいながら言った。
「私、知らなかったわ。あなたが――まあ――またお会いできて――お元気」
ロンの耳が、また真っ赤になった。招待状の中身など信じるものかと言わんばかりに、ロンはクラムの招待状を一目見るなり、不必要に大きな声で聞いた。
「どうしてここに来たんだい」
「フラーに招待された」クラムは眉を吊つり上げた。
クラムに何の恨うらみもないハリーは、握あく手しゅしたあと、ロンのそばから引き離はなすほうが賢けん明めいだと感じて、クラムを席に案内した。
「君の友達は、ヴぉくに会ってうれしくない」いまや満員のテントに入りながら、クラムが言った。「友達でなく親しん戚せきか」クラムは、ハリーのくるくる巻いた赤毛をちらりと見ながら聞いた。
「いとこだ」ハリーはボソボソと答えたが、クラムは別に答えを聞こうとしてはいなかった。クラムが現れたことで、客がざわめいた。とくにヴィーラのいとこたちがそうだった。なにしろ有名なクィディッチ選手が来たのだ。姿をよく見ようとみんなが首を伸ばしているところに、ロン、ハーマイオニー、フレッド、ジョージの四人が花道を急ぎ足でやって来た。
「着席する時間だ」フレッドがハリーに言った。「座らないと花嫁に轢ひかれるぞ」
ハリー、ロン、ハーマイオニーは二列目の、フレッドとジョージの後ろの席に座った。ハーマイオニーはかなり上気じょうきしているようだったし、ロンの耳はまだ真っ赤だった。しばらくして、ロンがハリーにブツブツ言った。「あいつ、間ま抜ぬけなちょび顎あごひげ生やしてやがったの、見たか」
ハリーは、どっちつかずにうなった。