ピリピリした期待感が暑いテントを満たし、ガヤガヤという話し声にときどき興こう奮ふんした笑い声が混じった。ウィーズリー夫妻が親戚に向かって笑顔で手を振ふりながら、花道を歩いてきた。ウィーズリー夫人は真新しいアメジスト色のローブに、おそろいの帽子ぼうしを被かぶっている。
その直後に、ビルとチャーリーがテントの正面に立った。二人ともドレスローブを着て、衿えりには大たい輪りんの白バラを挿さしている。フレッドがピーッと冷ひやかしの口くち笛ぶえを吹き、ヴィーラのいとこたちがクスクス笑った。金色の風船から聞こえてくるらしい音楽が高らかに響ひびき、会場が静かになった。
「わぁぁぁっ」ハーマイオニーが、腰こし掛かけたまま入口を振ふり返り、歓かん声せいを上げた。
ムッシュー・デラクールとフラーがバージンロードを歩きはじめると、会場の客がいっせいにため息をついた。フラーは滑すべるように、ムッシューは満面の笑みで弾はずむように歩いてきた。すっきりした白いドレスを着たフラーは、銀色の強い光を放はなっているように見えた。いつもはその輝かがやきで、他の者すべてが色褪いろあせてしまうのだが、今日はその光に当たった者すべてが美しく見えた。金色のドレスを着たジニーとガブリエールは、いつにも増してかわいらしく見え、ビルはフラーが隣となりに立ったとたん、フェンリール・グレイバックに遭そう遇ぐうしたことさえ嘘うそのように見えた。
「お集まりのみなさん」少し抑よく揚ようのある声が聞こえてきた。髪かみの毛のふさふさした小さな魔法使いが、ビルとフラーの前に立っていた。ダンブルドアの葬儀そうぎを取り仕切ったと同じ魔法使いなのに気づいて、ハリーは少しどきりとした。「本日ここにお集まりいただきましたのは、二つの誠せい実じつなる魂たましいが結ばれんがためであります……」
「やっぱり、わたしのティアラのおかげで場が引き立つぞぇ」ミュリエルおばさんが、かなりよく聞こえる囁ささやき声で言った。「しかし、どう見てもジネブラの胸むね開びらきは広すぎるぞぇ」
ジニーがちらりと振り向き、悪いた戯ずらっぽく笑ってハリーにウィンクしたが、すぐにまた正面を向いた。ハリーの心はテントをはるか離はなれて、ジニーと二人きりで過ごした午後の、誰もいない校庭の片かた隅すみでの想おもい出へと飛んでいった。あの日々が遠い昔のことのようだ。すばらしすぎて、現実とは思えなかったあの時間。ハリーにとっては、普通の人の人生から輝かしい時を盗み取ったかのような時間だった。額ひたいに稲いな妻ずま形がたの傷のない普通の人から……。
「汝なんじ、ウィリアム・アーサーは、フラー・イザベルを……」