「リータ・スキーター ああ、わたしゃ好きだぇ。いつも記事を読んどるぇ」
ハリーとドージが見上げると、シャンパンを手に、帽子ぼうしの羽は根ね飾かざりをゆらゆらさせて、ミュリエルおばさんが立っていた。
「それ、ダンブルドアに関する本を書いたんだぞぇ」
「こんばんは、ミュリエル」ドージが挨あい拶さつした。「そう、その話をしていたところじゃ――」
「そこのお前 椅い子すをよこさんかぇ。わたしゃ、百七歳だぞぇ」
別の赤毛のウィーズリーのいとこが、ぎくりとして椅子から飛び上がった。ミュリエルおばさんは驚くほどの力でくるりと椅子の向きを変え、ドージとハリーの間にストンと座り込んだ。
「おや、また会ったね、バリー、とか何とかいう名だったかぇ」ミュリエルがハリーに言った。「さーて、エルファイアス。リータ・スキーターについて何を言っていたのかぇ リータはダンブルドアの伝記を書いたぞぇ。わたしゃ早く読みたいね。フローリシュ・アンド・ブロッツ書店に注文せにゃ」
ドージは硬かたい厳きびしい表情をしたが、ミュリエルおばさんはゴブレットをぐいっと飲み干し、通りかかったウェイターを骨ばった指を鳴らして呼び止めてお代わりを要求した。シャンパンをもう一杯がぶりと飲み、ゲップをしてから、ミュリエルが話し出した。
「二人ともなんだぇ、ぬいぐるみのカエルみたいな顔をして あんなに尊敬され、ご立派とかへったくれとか言われるようになる前は、アルバスに関するどーんとおもしろい噂うわさがいろいろあったんだぞぇ」
「間違った情報じょうほうに基もとづく中傷じゃ」ドージは、またしても赤あか蕪かぶのような色になった。
「エルファイアス、あんたならそう言うだろうよ」ミュリエルおばさんは高笑いした。「あんたがあの追つい悼とう文ぶんで、都合の悪いところをすっ飛ばしているのに、あたしゃ気づいたぇ」
「あなたがそんなふうに思うのは、残念じゃ」ドージは、めげずにますます冷たく言った。「わしは、心からあの一文を書いたのじゃ」
「ああ、あんたがダンブルドアを崇すう拝はいしとったのは、周知のことだぇ。アルバスがスクイブの妹を始末したのかもしれないとわかっても、きっとあんたはまだ、あの人が聖せい人じん君くん子しだと考えることだろうぇ」
「ミュリエル」ドージが叫さけんだ。
冷えたシャンパンとは無関係の冷たいものが、ハリーの胸に忍び込んだ。