「チュニー」
リリーの声は、驚きながらもうれしそうだった。しかし、スネイプは弾はじかれたように立ち上がった。
「こんどは、どっちがスパイだ」スネイプが叫さけんだ。「何の用だ」
ペチュニアは見つかったことに愕がく然ぜんとして、息もつけない様子だった。ハリーには、ペチュニアがスネイプを傷きずつける言葉を探しているのがわかった。
「あなたの着ている物は、いったい何」
ペチュニアは、スネイプの胸を指差して言った。
「ママのブラウス」
ボキッと音がして、ペチュニアの頭上の枝が落ちてきた。リリーが悲鳴を上げた。枝はペチュニアの肩に当たり、ペチュニアは後ろによろけてワッと泣き出した。
「チュニー」
しかし、ペチュニアはもう走り出していた。リリーはスネイプに食ってかかった。
「あなたのしたことね」
「違う」
スネイプは挑ちょう戦せん的てきになり、同時に恐れているようだった。
「あなたがしたのよ」
リリーはスネイプのほうを向いたまま、後あと退ずさりしはじめた。
「そうよ ペチュニアを痛い目に遭あわせたのよ」
「違う――僕はやっていない」
しかし、リリーはスネイプの嘘うそに納得しなかった。激はげしい目つきでにらみつけ、リリーは小さな茂みから駆かけ出して、ペチュニアを追った。スネイプは、みじめな混乱した顔で見送っていた……。
そして場面が変わった。ハリーが見回すとそこは九と四分の三番線で、ハリーの横にやや猫背のスネイプが立ち、その隣となりにスネイプとそっくりな、痩やせて土つち気け色いろの顔をした気難きむずかしそうな女性が立っていた。スネイプは、少し離れたところにいる四人家族をじっと見ていた。二人の女の子が、両親から少し離れて立っている。リリーが何か訴うったえているようだった。ハリーは少し近づいて聞き耳を立てた。
「……ごめんなさい、チュニー、ごめんなさい ねぇ――」
リリーはペチュニアの手を取って、引っ込めようとする手をしっかり握った。
「たぶん、わたしがそこに行ったら――ねぇ、聞いてよ、チュニー たぶん、わたしがそこに行けば、ダンブルドア教授きょうじゅのところに行って、気持が変わるように説得できると思うわ」
「私――行きたく――なんか――ない」
ペチュニアは、握られている手を振りほどこうと、引いた。
「私がそんな、ばかばかしい城なんかに行きたいわけないでしょ。何のために勉強して、わざわざそんな――そんな――」