「よろしい。さてと、きみにとっては、ドラコが何をしようとしているかを見つけ出すのが、最優先課題じゃ。恐怖きょうふに駆かられた十代の少年は、自分の身を危険にさらすばかりか、他人にまで危害きがいを及ぼす。手助けし、導いてやるとドラコに言うがよい。受け入れるはずじゃ。あの子はきみを好すいておる――」
「――そうでもありません。父親が寵愛ちょうあいを失ってからは。ドラコは私を責めています。ルシウスの座を私が奪うばったと考えているのです」
「いずれにせよ、やってみることじゃ。わしは自分のことより、あの少年が何か手立てを思いついたときに偶然その犠牲ぎせいになる者のことが心配じゃ。もちろん最終的には、わしらがあの少年をヴォルデモート卿きょうの怒りから救う手段は、たった一つしかない」
スネイプは眉まゆを吊つり上げ、茶化すような調子で尋たずねた。
「あの子に、ご自分を殺させるおつもりですか」
「いや、いや。きみがわしを殺さねばならぬ」
長い沈ちん黙もくが流れた。ときどきコツコツという奇妙きみょうな音が聞こえるだけだった。不ふ死し鳥ちょうのフォークスがイカの甲を啄ついばんでいた。
「いますぐに、やってほしいですか」
スネイプの声は皮肉たっぷりだった。
「それとも、少しの間、墓に刻きざむ墓ぼ碑ひ銘めいをお考えになる時間が要いりますか」
「おお、そうは急がぬ」ダンブルドアが微笑ほほえみながら言った。
「そうじゃな、そのときは自然にやって来ると言えよう。今夜の出来事からして」ダンブルドアは萎なえた手を指した。「そのときは、間違いなく一年以内に来る」
「死んでもいいのなら」スネイプは乱暴な言い方をした。「ドラコにそうさせてやったら、いかがですか」
「あの少年の魂たましいは、まだそれほど壊こわされておらぬ」ダンブルドアが言った。「わしのせいで、その魂を引き裂さかせたりはできぬ」