「ヴォルデモートは、その結びつきを恐れておる」ダンブルドアが言った。「それほど昔のことではないが、ヴォルデモートは一度だけ、ハリーの心と真に結びつくという経けい験けんがどんなものかをわずかに味わったことがある。それは、ヴォルデモートがかつて経験したことのない苦痛じゃった。もはや再び、ハリーに取とり憑つこうとはせぬだろう。わしには確信がある。同じやり方ではやらぬ」
「どうもわかりませんな」
「ヴォルデモート卿の魂たましいは、損傷そんしょうされているが故ゆえに、ハリーのような魂と緊きん密みつに接触せっしょくすることに耐たえられんのじゃ。凍こおりついた鋼はがねに舌を当てるような、炎に肉を焼かれるような――」
「魂 我々は、心の話をしていたはずだ」
「ハリーとヴォルデモート卿の場合、どちらの話も同じことになるのじゃ」
ダンブルドアはあたりを見回して、二人以外に誰もいないことを確かめた。「禁きんじられた森もり」の近くに来ていたが、あたりには人の気配はない。
「きみがわしを殺したあとに、セブルス――」
「あなたは、私に何もかも話すことは拒こばんでおきながら、そこまでのちょっとした奉仕ほうしを期待する」
スネイプがうなるように言った。その細長い顔に、心から怒りが燃え上がった。
「ダンブルドア、あなたは何もかも当然のように考えておいでだ 私だって気が変わったかもしれないのに」
「セブルス、きみは誓ちかってくれた。ところで、きみのするべき奉仕の話が出たついでじゃが、例の若いスリザリン生から目を離はなさないと承知してくれたはずじゃが」
スネイプは憤ふん慨がいし、反はん抗こう的てきな表情だった。ダンブルドアはため息をついた。
「今夜、わしの部屋に来るがよい、セブルス、十一時に。そうすれば、わしがきみを信用していないなどと、文句は言えなくなるじゃろう……」