そして場面は、ダンブルドアの校長室になり、窓の外は暗く、フォークスは止とまり木に静かに止まっていた。身動きもせずに座っているスネイプの周りを歩きながら、ダンブルドアが話していた。
「ハリーは知ってはならんのじゃ。最後の最後まで。必要になるときまで。さもなければ、為なさねばならぬことをやり遂とげる力が、出てくるはずがあろうか」
「しかし、何を為さねばならないのです」
「それはハリーとわしの、二人だけの話じゃ。さてセブルス、よく聴きくのじゃ。そのときは来る――わしの死後に――反論するでない。口を挟はさむでない ヴォルデモート卿きょうが、あの蛇へびの命を心配しているような気配を見せるときが来るじゃろう」
「ナギニの」スネイプは驚愕きょうがくした。
「さよう。ヴォルデモート卿が、あの蛇を使って自分の命令を実行させることをやめ、魔法の保ほ護ごの下に安全に身近に置いておくときが来る。そのときには、たぶん、ハリーに話しても大丈夫じゃろう」
「何を話すと」
ダンブルドアは深く息を吸い、目を閉じた。
「こう話すのじゃ。ヴォルデモート卿があの子を殺そうとした夜、リリーが盾たてとなって自みずからの命をヴォルデモートの前に投げ出したとき、『死しの呪のろい』はヴォルデモートに撥はね返り、破は壊かいされたヴォルデモートの魂たましいの一部が、崩くずれ落ちる建物の中に唯ゆい一いつ残されていた生きた魂に引っかかったのじゃ。ヴォルデモート卿の一部が、ハリーの中で生きておる。その部分こそがハリーに蛇と話す力を与え、ハリーには理解できないでいることじゃが、ヴォルデモートの心とのつながりをもたらしているのじゃ。そして、ヴォルデモートの気づかなかったその魂たましいのかけらが、ハリーに付着してハリーに守られているかぎり、ヴォルデモートは死ぬことができぬ」
ハリーは、長いトンネルの向こうに、二人を見ているような気がした。二人の姿ははるかに遠く、二人の声はハリーの耳の中で奇妙きみょうに反響はんきょうしていた。
「するとあの子は……あの子は死なねばならぬと」
スネイプは落ち着き払って聞いた。
「しかも、セブルス、ヴォルデモート自身がそれをせねばならぬ。そこが肝かん心じんなのじゃ」