ジニーはいま、傷きずついた少女の傍かたわらに膝ひざをつき、その片手を握っていた。ハリーは力を振りしぼって歩きはじめた。そばを通り過ぎるとき、ジニーが振り返るのを見たような気がした。通り過ぎる人の気配を、ジニーが感じ取ったのだろうか。しかし、ハリーは声をかけず、振り返りもしなかった。
ハグリッドの小屋が、暗闇くらやみの中に浮かび上がってきた。明かりは消え、扉とびらを引っかくファングの爪つめの音も、うれしげに吠ほえる声も聞こえない。何度もハグリッドを訪ねたっけ。暖炉だんろの火に輝く銅のヤカン、固いロックケーキ、巨大な蛆虫うじむし、そしてハグリッドの大きなひげもじゃの顔。ロンがナメクジを吐はいたり、ハーマイオニーがハグリッドのドラゴン、ノーバートを助ける手伝いをしたり……。
ハリーは歩き続けた。「禁きんじられた森もり」の端はたにたどり着き、そこで足がすくんだ。
木々の間を、吸きゅう魂こん鬼きの群れがスルスル飛び回っている。その凍こおるような冷たさを感じ、無事に通り抜けられるかどうか、ハリーには自信がなかった。守しゅ護ご霊れいを出す力は残っていない。もはや、体の震えを止めることさえできなくなっていた。死ぬことは、やはり、そう簡単ではなかった。息をしている瞬間しゅんかんが、草の匂においが、そして顔に感じるひんやりした空気が、とても貴重に思えた。たいていの人には何年ものあり余る時間があり、それをただ浪費しているというのに、自分は一秒一秒にしがみついている……。これ以上進むことはできないと思うと同時に、ハリーには進まなければならないこともわかっていた。長いゲームが終わり、スニッチは捕まり、空を去るときが来たのだ……。
スニッチ。感覚のない指でハリーは首から掛かけた巾着きんちゃくをぎごちなく手探りし、スニッチを引っ張り出した。
私は終わるときに開く。