空き地の中央に焚たき火びが燃え、チラチラと揺らめく炎の明かりが、黙だまりこくってあたりを警けい戒かいしている死喰い人の群れを照らしていた。まだ仮面とフードをつけたままの死喰い人もいれば、顔をさらしている者もいる。残忍で、岩のように荒削あらけずりな顔の巨人が二人、群れの外側に座ってその場に巨大な影を落としていた。フェンリール・グレイバックが、長い爪つめを噛かみながら忍び歩いている姿や、ブロンドの大男ロウルが出血した唇くちびるを拭ぬぐっているのが見えた。ルシウス・マルフォイは、打ちのめされ恐怖きょうふに怯おびえた表情をし、ナルシッサは、目が落おち窪くぼみ心配でたまらない様子だった。
すべての目が、ヴォルデモートを見つめていた。その場に頭を垂れて立っているヴォルデモートは、ニワトコの杖つえを持った蝋ろうのような両手を胸の前で組んでいる。祈っているようでもあり、頭の中で時間を数えているようでもあった。空き地の端はしにたたずみながら、ハリーは場違いな光景を思い浮かべた。かくれんぼの鬼になった子どもが、十まで数えている姿だ。ヴォルデモートの頭の後ろには、怪奇かいきな後光ごこうのように光る檻おりが浮かび、大蛇だいじゃのナギニがその中でくねくねととぐろを巻いたり解といたりしていた。
ドロホフとヤックスリーが仲間の輪に戻ると、ヴォルデモートが顔を上げた。
「わが君、あいつの気配はありません」ドロホフが言った。
ヴォルデモートは、表情を変えなかった。焚き火の灯りを映した眼めが、赤く燃えるように見えた。ゆっくりと、ヴォルデモートはニワトコの杖を長い指でしごいた。
「わが君――」
ヴォルデモートのいちばん近くに座っているベラトリックスが、口を開いた。髪かみも服も乱れ、顔が少し血にまみれてはいたが、ほかにけがをしている様子はない。
ヴォルデモートが手を挙げて制すると、ベラトリックスはそれ以上一言も言わず、ただうっとりと崇拝すうはいの眼差まなざしでヴォルデモートを見ていた。
「あいつはやって来るだろうと思った」
踊おどる焚たき火びに眼めを向け、ヴォルデモートが甲高かんだかいはっきりした声で言った。
「あいつが来ることを期待していた」