ハリーはうつ伏せになって、静寂せいじゃくを聞いていた。完全に一人だった。誰も見ていない。ほかには誰もいない。自分自身がそこにいるのかどうかさえ、ハリーにはよくわからなかった。
ずいぶん時間が経たってから、いや、もしかしたら時間はまったく経っていなかったのかもしれないが、ハリーは、自分自身が存在しているに違いないと感じた。体のない、想念そうねんだけではないはずだ。なぜなら、ハリーは横たわっていた。間違いなく何かの表面に横たわっている。触感しょっかんがあるのだ。自分が触ふれている何かも存在している。
この結論に達したのとほとんど同時に、ハリーは自分が裸はだかなのに気づいた。自分以外には誰もいないという確信があったので裸でいることは気にならなかったが、少し不思議に思った。感じることができるのと同じように、見ることもできるのだろうか、とハリーは訝いぶかった。目を開いてみて、ハリーは自分に目があることを発見した。
ハリーは明るい靄もやの中に横たわっていたが、これまで経験したどんな靄とも様子が違っていた。雲のような水すい蒸じょう気きが周囲を覆おおい隠しているのではなく、むしろ、靄そのものがこれから周囲を形作っていくようだった。ハリーが横たわっている床は、どうやら白い色のようで、温かくも冷たくもない。ただそこに、平らで真っさらな物として存在し、何かがその上に置かれるべく存在していた。
ハリーは上体を起こした。体は無傷むきずのようだ。顔に触れてみた。もう、メガネは掛かけていなかった。
第35章 国王十字车站
哈利面朝下躺着,聆听着一片寂静。他完全是一个人。没 有人在看他。周围没有别人。他不能十分肯定自己是不是在这 里。
过了很长时间,也许根本没有时间,他意识到自己肯定存 在,肯定不只是脱离了肉体的思绪,因为他躺在,绝对是躺在 ,某个东西的表面。因此他是有触觉的,而他身下的那个东西 也是存在的。
刚得出这个结论,哈利几乎立刻意识到自己浑身赤裸。他 相信这里只有他一个人,便不觉得难为情,只觉得有点儿好奇 。他有触觉,便想知道是不是还有视觉,他试着睁了睁眼,发 现自己还有眼睛。
他躺在明亮的薄雾里,但跟他以前见过的雾不一样。不是 周围的景物都笼罩在云雾般的蒸气中,而是这些云雾般的蒸气 还没有形成周围的景物。他所躺的地面似乎是白色的,不热也 不冷,只是一种存在,一种平平的、空荡荡的东西。
他坐了起来,身体好像没有受伤。他摸摸脸,眼镜没有了 。
一种声音,从周围未成形的虚无中传到了他的耳朵里:某 个东西不断拍打、摆动和挣扎发出的细小的撞击声。这声音令 人心生怜悯,同时又有些猥琐。他有一种很不舒服的感觉,似 乎在偷听什么隐秘而可耻的事情。
这个时候,他才希望自己穿着衣服。
这个念头刚在脑海里成形,不远处就出现了一件长袍。他 拿过来穿在身上:长袍柔软、干净,暧呼呼的。多么奇特,它 就那样出现了,他刚冒出这个念头……