「まず理解しておかねばならぬのは、ハリー、きみとヴォルデモート卿きょうが、前ぜん人じん未み踏とうの魔法の分野をともに旅してきたということじゃ。しかしながら、いまから話すようなことが起きたのではないかと思う。前例のないことじゃから、どんな杖作つえつくりといえども予測できず、ヴォルデモートに対しても説明できはしなかった、とわしはそう思う」
「きみにはもうわかっているように、ヴォルデモート卿は、人の形に蘇よみがえったとき、意図せずしてきみとの絆きずなを二重に強めた。魂たましいの一部をきみに付着させたまま、あの者は、自分を強めるためと考えて、きみの母君ははぎみの犠牲ぎせいの力を一部自分の中に取り込んだのじゃ。その犠牲がどんなに恐ろしい力を持っているかを的確に理解していたなら、ヴォルデモートはおそらく、きみの血に触ふれることなどとてもできなかったじゃろう……いや、さらに言えば、もともとそれが理解できるくらいなら、あの者は所詮しょせんヴォルデモート卿ではありえず、また、人を殺あやめたりしなかったかもしれぬ」
「この二重の絆を確実なものにし、互いの運命を歴史上例を見ないほどしっかりと結びつけた状態で、ヴォルデモートは、きみの杖と双子ふたごの芯しんを持つ杖できみを襲おそった。すると、知ってのとおり、摩ま訶か不ふ思し議ぎなことが起こった。芯同士どうしが、二人の杖が双子であることを知らなかったヴォルデモート卿には、予想外の反応を示したのじゃ」
「あの夜、ハリーよ、あの者のほうが、きみよりももっと恐れていたのじゃ。きみは死ぬかもしれぬということを受け入れ、むしろ積極的に迎え入れた。ヴォルデモート卿には決してできぬことじゃ。きみの勇気が勝った。きみの杖があの者の杖を圧倒したのじゃ。その結果、二本の杖の間に、二人の持ち主の関係を反映した何事かが起こった」
「きみの杖はあの夜、ヴォルデモートの杖の力と資質の一部を吸収した、とわしは思う。つまり、ヴォルデモート自身の一部を、きみの杖が取り込んでおったのじゃ。そこで、あの者がきみを追跡ついせきしたとき、きみの杖はヴォルデモートを認識した。血を分けた間柄あいだがらでありながら不ふ倶ぐ戴たい天てんの敵である者を認識して、ヴォルデモート自身の魔法の一部を、彼に向けて吐はき出したのじゃ。その魔法は、ルシウスの杖がそれまでに行ったどんな魔法よりも強力なものじゃった。きみの杖は、きみの並外なみはずれた勇気と、ヴォルデモート自身の恐ろしい魔力を併あわせ持っていた。ルシウス・マルフォイの哀あわれな棒切れなど、敵かなうはずもないじゃろう」